「せきれい丸」の原画を前に、作品への思いを語る田島征彦さん(京都市中京区・ギャラリーヒルゲート)

 絵本作家で染色家の田島征彦さん(81)=兵庫県淡路市=が、新作絵本「せきれい丸」の原画展を、京都市中京区寺町通三条上ルのギャラリーヒルゲートで開いている。戦後、明石海峡で起きた海難事故を題材に創作した。型染め技法による作品が並び、生きることの大切さや命の尊さを伝えている。

 田島さんは2001年に淡路島へ移り住むまで、京都府八木町(現南丹市)で暮らし、人気絵本「じごくのそうべえ」や「祇園祭」などを生み出した。新作を手がけた際には同ギャラリーで個展を開いており、今回は約50点を飾った。

 せきれい丸は1945年12月、淡路島から明石港へと向かい、沖合で強風を受け沈没。戦後の食糧難を背景に、定員の3倍超の349人が乗船し、救助されたのは45人だった。

 絵本は小学生のひろしが主人公。せきれい丸に乗船し、親友の父親に救助されるが、親友は犠牲になってしまう。ひろしは生き残ったことに苦しみがらも、生きる力を取り戻していくという物語だ。

力強く、美しい型染めの原画

 会場には全ページの原画をそろえた。波のうねりや戦争の激しさを、型染めによって力強く表現している。大勢の人が船に押し寄せる場面では、ひろし以外の人々の表情をモノクロにし、混乱期のいらだちや怒りを表したという。

 絵本は生存者からの声を受けて制作した。田島さんは、幼少期に大阪の堺で戦争を体験し、空襲で友人を亡くした。「身近で大切な人が死ぬことを考えたとき、恐怖と不安に襲われた。せきれい丸で助けられた人も同じ気持ちだったのだろうか」と思いを重ねたという。

沖縄戦で激しい艦砲射撃や空襲を浴びた「鉄の暴風」を描いた作品。抽象的に描くことで、怒りや恐怖を感性で訴える(京都市中京区・ギャラリーヒルゲート)

 開場では、沖縄戦の無差別砲弾を描いた新作絵画「鉄の暴風」シリーズも展示している。怒りや恐怖など人間の本質を抽象的に表現した。「絵本は具体的な描写で伝えるが、絵画は感性で人の心に訴える。変化する表現方法を見てほしい」と語る。

 28日まで。正午~午後7時(最終日は午後5時)。無料。