「大阪都構想」の住民投票で示された民意を無視するつもりか。

 大阪市が持つ都市計画などの権限を大阪府に委託する「広域行政一元化条例」案が、府市両議会で週内にも可決の見通しとなった。

 昨年11月に都構想は僅差で否決されたが、松井一郎大阪市長は府市対立や二重行政の解消はなお必要だとして、条例案を「都構想の代替案」に位置づけてきた。

 過去2度の住民投票で、市民は政令指定都市としての大阪市を存続させることを選択したはずだ。

 それなのに、政令市の重要な権限を奪う条例案に置き換えてしまうのは、有権者の意思をねじ曲げていると言わざるを得ない。

 住民投票の重い意思表示をないがしろにし、正反対の政策を押し通すやり方は、民主主義の観点から見過ごすわけにはいかない。

 進め方も拙速で強引だ。府市両議会での審議は1カ月に満たず、成立すれば4月1日施行となる。議論は十分できたといえるのか。

 そもそも、松井氏率いる大阪維新の会は地方分権の実現を掲げてきた。しかし、府市一元化は分権に逆行するとの指摘が根強い。

 条例案は、成長戦略などを協議する「副首都推進本部会議」を設けて知事が本部長に就任し、市内の再開発事業や高速道路整備などで府が主導権を握ることが柱だ。

 ただ、ここ約20年間の分権改革は、都道府県から市町村に権限を移す方向で進んできた。松井氏が繰り返している府県と政令市の二重行政も、政令市に権限移譲する方向で解消すべきとされている。

 京都市など他の政令市は、府県から独立して全ての事務を担える「特別自治市」を提唱している。

 大阪府市一元化は、住民に身近な自治体に権限を下ろしていく流れとは逆の発想だ。なぜ、そうした方向性が必要なのか、実現すれば府市民の暮らしや意思決定がどう変わるのか。十分な説明がなされてきたとは言い難い。

 広域行政の事務を調整したり、身近な行政区の権限を強化したりする制度は、すでに複数ある。だが、松井氏らは、都構想や一元化で大阪市の権限を縮小することにこだわっているようにみえる。

 条例案の成立が確実になった背景として、市議会では過半数を持たない維新が次期衆院選での対抗馬擁立をちらつかせて公明党を揺さぶり、賛成側に取り込んだと指摘されている。自治体の在り方に関わる重要な制度変更が政党間の取引材料にされるなら、党利党略のそしりは免れない。