公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告が、東京地裁の被告人質問で無罪主張から一転して地元議員らへの買収を認めた。責任をとって議員辞職も表明した。

 東京地検による逮捕から約9カ月。既に地元議員らの大半が買収の趣旨を認めるなど、外堀を埋められて無罪主張の撤回を余儀なくされた形だ。

 河井議員は「国政選挙の信頼を損なった」と謝罪したが、大がかりな買収事件の真相をまだ明らかにしていない。自ら経緯を詳しく説明する責任がある。

 河井議員は、2019年7月の参院選広島選挙区で、妻の案里氏を当選させるため地元議員や首長ら100人に計約2900万円を配ったとされる。

 現金を渡したことは認めたが、初公判では「有望な政治家への寄付」などとして買収を否定していた。

 だが、案里氏は一審の有罪判決を受け入れ、既に参院議員を辞職した。受領した地元議員らも次々と「集票依頼だと思った」などと証言し、100人のうち94人が買収だったと認めた。

 狭まる包囲網の中、被告人質問で河井議員は買収の事実をおおむね認め、「案里の当選を得たいという気持ちが全くなかったとは言えない」と述べた。

 このタイミングで議員辞職の表明に及んだのは、罪を認めて量刑を有利にするだけでなく、補欠選挙を避ける狙いがあったのではないかとの指摘も出ている。

 公選法の規定では辞職が今月15日を過ぎれば補選は行われず、4月に予定されている案里氏の失職に伴う再選挙と重ならずに済む。

 選挙への逆風を和らげたい与党の思惑も、辞職に絡んでいるとみるのが自然だろう。

 買収の原資も未解明だ。

 案里氏の選挙では、官房長官だった菅義偉首相らが全面支援し、自民党本部は夫妻の政党支部に現職の10倍とされる1億5千万円を投入した。

 その一部が買収に使われたとの疑念がくすぶるが、使途はいまだ明らかにされていない。

 自民党には真相解明の責任がある。ところが二階俊博幹事長は「他山の石として、しっかり対応していかなければならない」と人ごとのような発言をしており、あきれるほかない。

 前代未聞の大規模な選挙買収事件である。うやむやのままで幕引きは許されない。