仏教不屈の名宝

国宝「鑑真和上坐像」 8世紀 奈良・唐招提寺蔵 撮影:金井杜道

 多難を乗り越え日本に戒律を伝えた鑑真(688~763年)の業績と、日本の戒律史をたどる「凝然(ぎょうねん)国師没後700年 特別展『鑑真和上と戒律のあゆみ』」(京都新聞など主催)が27日から、京都市東山区の京都国立博物館で開催される。京都府内での公開は45年ぶりとなる唐招提寺「鑑真和上坐像」(国宝)など、ゆかりの品々約160点が展観される。

「三国祖師影」(部分) 平安時代 1150年 京都・大谷大学博物館蔵 後期展示

 戒律は仏教徒が守るべき規範。鑑真は中国の戒律を大成させた道宣(どうせん)の系譜を継ぐ高僧として知られていた。日本側の要請に応えた鑑真は、渡航失敗や失明を乗り越え6度目の挑戦で来日。東大寺に戒壇を設けたほか、唐招提寺を拠点に日本仏教の質を高めた。

重要文化財「『東征伝絵巻』巻二」(部分) 鎌倉時代 1298年 奈良・唐招提寺蔵 撮影‥金井杜道 巻き替えあり

 「東征伝絵巻」(重要文化財)は鑑真の生涯を描いた鎌倉時代の名品。「鑑真和上坐像」はひげやまつげまで表現され、高僧のリアルな姿を写しとどめる中国の影響が見られる。いずれも唐招提寺の寺宝だ。

 鑑真が伝えた戒律は、日本で独自の進展を遂げた。社会の変化と向き合った時、高僧らが戒律に回帰し自らはどうあるべきか追求した結果といえる。

 さきがけとなった最澄は、釈迦(しゃか)の時代から隔たり風土も異なる日本の実情を踏まえ、最低限の規範に着目。こうした姿勢は後の法然らにも影響を与えた。

重要文化財「『南山教義章』巻第二十九」(部分)凝然筆 鎌倉時代 1291年 京都国立博物館蔵 巻き替えあり

 武家が台頭し社会が激変した鎌倉時代には、戒律復興の動きが起こる。唐招提寺中興の祖といわれる覚盛(かくじょう)や、戒律研究に努めた東大寺の凝然らの座像や直筆の著作が展示される。

 商業が発達した近世も戒律が注目された。仏教の根源を追求し商人の倫理規範にも寄与した慈雲を描いた絵画や、仏教の世界観と西洋の天文学を合致させようと制作された天球儀から、時代と向き合った僧侶たちの歩みをたどる。

 同館の大原嘉豊保存修理指導室長は「戒律を通したもう一つの日本仏教史を見てもらえれば」と話している。

「慈雲巌上坐禅像」原在中筆 江戸時代 1783年 大阪・高貴寺蔵 前期展示


【会期】 3月27日(土)~5月16日(日) 前期は4月18日まで、後期は4月20日から 月曜休館 5月6日(木)は休館、5月3日は開館 ※4月25日(日)〜5月11日(火)まで臨時休館
【開館時間】 午前9時~午後5時半(入館は閉館30分前まで)
【会場】 京都国立博物館(京都市東山区茶屋町)
【入館料】 一般1800(1600)円、大学生1200(1000)円、高校生700(500)円。障害者手帳提示の人と介護者1人まで、中学生以下は無料。かっこ内は前売り券(発売は3月26日まで)
【主催】 京都国立博物館、律宗総本山唐招提寺、日本経済新聞社、京都新聞、NHK京都放送局
【問い合わせ】 同館075(525)2473(テレホンサービス)
【関連イベント】
 開幕記念講演会「鑑真和上の教え」西山明彦氏(律宗管長、唐招提寺八十八世長老)=3月27日
 記念講演会「律とは何か」上杉智英氏(京都国立博物館研究員)=4月3日
 「日本の戒律運動と日本人」大原嘉豊氏(同館保存修理指導室長)=4月10日
 「俊芿と宋代戒律の日本への影響」西谷功氏(泉涌寺宝物館「心照殿」学芸員)=4月17日
 「鑑真和上とゆかりのみ仏たち」淺湫毅氏(京都国立博物館上席研究員)=5月8日
 いずれも時間は午後1時半~午後3時、会場は平成知新館講堂、定員100人、無料(当日観覧券が必要) 当日午前9時半より平成知新館1階グランドロビーで整理券を配布 定員になり次第、配布を終了する