妊婦の血液でダウン症など胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」について、日本産科婦人科学会が要件緩和案を了承した。

 学会指定の研修を受けた産婦人科医がいる施設なら、開業医などの規模の小さな病院でも検査できるようにする。

 検査を受けられる施設が増えるのは間違いない。「命の選別」につながる可能性のある新出生前診断が、なし崩し的に拡大するのは心配だ。

 新出生前診断は日本では2013年に始まった。昨年9月までに約6万5千人が受け、胎児の染色体異常が確定した妊婦886人の約9割が中絶した。

 施設が増えれば、安易に受ける人も出てくるのではないか。遺伝カウンセリングの重要性は一層高まるといえる。

 研修を受けた医師は専門医と同じレベルのカウンセリングができるのが前提という。質が担保されるか懸念する声もある。

 学会はこれまで、条件を満たした大学病院など全国92施設に限定して実施を認めてきた。

 しかし、ルールを守らずに検査を提供する無認定の民間クリニックに行く人が増えているという。記者会見した同学会の藤井知行理事長は「無認定施設で多くの妊婦が受けて、カウンセリングも確定検査もなく困っている状況がある」と述べた。

 より適正な形で検査を受けられる施設を増やそうという趣旨は理解できる。だが、議論の内容は公開されておらず、「緩和ありき」で進んだとの批判もある。

 医師らの学会に任せたままにせず、国が仕組みづくりに積極的に関与するべきではないか。

 気掛かりなのは、施設が増えることで妊婦は新検査を受けて当然というムードが社会に広がらないかという点だ。障害の有無を出生前に知れば、妊婦は産む、産まないという選択を強いられる。

 「異常」を排除する動きが広がり、多様な人が生きる社会の否定につながりかねない。

 ダウン症の家族らでつくる団体から、慎重な運用を求める声が出ているのは当然である。

 新出生前診断は世界的に普及が進んでいる。今は三つの染色体異常だけだが、検査技術の進歩は急ピッチだ。検査の対象疾患は将来、拡大するとの予想もある。

 胎児の遺伝情報をどこまで知り、どう扱うべきか―。日本は法整備も十分進んでおらず、検査が広がる前に社会的な議論と合意形成を進める必要がある。