スマートフォンを手放せず、ゲーム依存から抜け出せない子どもが増える中、教育現場から紙の教科書が消えると聞けば、つい心配になるのも当然か。

 デジタル教科書の在り方を議論する文部科学省の検討会議が、2024年度からの本格導入を求める中間まとめを公表した。明治から続く紙の教科書からの転換で課題は多い。一つ一つ慎重な議論と検証が欠かせず、導入ありきの見切り発車は避けたい。

 デジタル教科書は、紙の教科書の内容をタブレット端末などに取り込んで利用する。紙と併用して19年度から学校で正式に使えるようになった。ただ健康面に配慮し「授業時間数の2分の1未満」の条件付きだった。

 文科省によると、デジタル教科書の普及は昨年3月現在、小学校7・7%、中学校9・2%にすぎない。学校の情報通信技術(ICT)環境が整っていなかったのに加え、義務教育では紙の教科書は無償配布されるが、デジタルは対象外だったことも普及の妨げとなっていた。

 しかし昨年来、コロナ禍に伴いオンライン授業にも備えるため、全小中学生に1人1台のタブレット端末などを配備する「GIGAスクール構想」が前倒しで進み、今月中にほぼ完了する見通しとなった。

 中間まとめは、ICTの環境整備を受け、現行の小学校教科書が改定され現場で使用される24年度を「本格導入の最初の契機」と位置付けた。「2分の1未満」基準の撤廃も求めた。

 検討会議は、デジタルの利点として直接画面に書き込んだり消去したりしながら試行錯誤しやすい点や、機械音声による読み上げで読み書きが難しい子どもらの学習が容易になる点などを列挙している。

 だがデジタル学習で学力は定着するだろうか。視力や脳の発達に影響を及ぼし、じかに手で触れ、感じ、考える力が弱まらないか。デジタル依存を助長しかねないとの懸念も残る。

 紙の教科書に対しても一覧性などを評価するものの、立ち位置はデジタルの積極活用に偏りがちと映る。巨額の投資をした端末導入などを正当化するための提言ならば納得し難い。

 文科省は、中間まとめを踏まえ、来月から全国の約半数の小中学校で実証事業を開始し、学習効果などを検証する。

 デジタル教科書が単なる紙からの置き換えでは効果はそれほど期待できないだろう。デジタルの特性や機能を生かし、理解しづらかった部分の学習データなどを把握できれば、個々の習熟度に合わせ効率的に指導できる。そのためには教員のスキルアップが欠かせない。

 ICT教育の充実には教材などをそろえる費用が要る。国は、家庭や地域、学校による教育格差が生じないよう教育の機会均等の保障に配慮をすべきだ。紙の教科書との関係や検定の在り方、無償の対象とするかどうか、引き続き検討が欠かせない。

 デジタル化が急速に進み、子どもたちは進展著しいICTといや応なく共存しなければならない。デジタル教科書の利点、欠点をどう考えるか。国民的な課題として議論を深めたい。