列車のようにつながっていくゲームではしゃぐ園児たち。会話や掲示物はほとんどが朝鮮語だ(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校付属幼稚班)

列車のようにつながっていくゲームではしゃぐ園児たち。会話や掲示物はほとんどが朝鮮語だ(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校付属幼稚班)

日本語と朝鮮語の絵本が並ぶ本棚。子どもたちは両方の言語で本に親しんでいく(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校付属幼稚班)

日本語と朝鮮語の絵本が並ぶ本棚。子どもたちは両方の言語で本に親しんでいく(京都市伏見区・京都朝鮮初級学校付属幼稚班)

お絵かきを楽しむ園児たち。保育内容は、会話に朝鮮語を使うほかは日本の保育園や幼稚園とほとんど変わらない

お絵かきを楽しむ園児たち。保育内容は、会話に朝鮮語を使うほかは日本の保育園や幼稚園とほとんど変わらない

 朝鮮半島にルーツを持つ子どもが通う京都の朝鮮学校2校で近年、未就学児を受け入れる「幼稚班」の園児数が減少している。2019年に始まった国の幼保無償化の対象から外れたことなどが影響したとみられ、4月以降は2校とも園児が10人前後に落ち込む見通しだ。学校関係者は「在日コリアンとして誇りを持って生きていくための民族教育の入り口が、存続の危機になるかもしれない」と懸念している。

■日本の幼稚園や保育園と変わらぬ風景、「鬼滅」が大人気

 先生のピアノ演奏に合わせ、「ドレミの歌」を朝鮮語で歌う子どもたち。歌や体操の時間が終わると、グラウンドで陣取りゲームが始まった。2~6歳の14人が在籍する京都朝鮮初級学校付属幼稚班(京都市伏見区)の日常風景だ。

 幼稚班での過ごし方は、日本の保育園や幼稚園とほとんど変わらない。みんなで歌やダンス、スポーツを楽しんだり、自由時間はお絵描きや外遊びをしたりする。朝鮮の民謡や楽器に触れる機会もある。

 年長の女児(6)に幼稚班で楽しいことを尋ねると、「おままごとでお姉ちゃん役をするのと、粘土遊び」と笑顔で答えた。最近は、どの園児も人気アニメ「鬼滅の刃」が大好きだ。

■日常会話は朝鮮語、子どもはバイリンガルに

 日本の幼稚園・保育園と大きく異なる点は、民族の言葉や文化を学ぶため、園内の会話に朝鮮語を使うことだ。ほとんどの園児は日本語が母語。入園当初は朝鮮語が分からないが、半年ほどで簡単な会話を身につけ、バイリンガルに育っていく。

 朝鮮学校の幼稚班と通常の保育園で各6年ずつ勤務した経験を持つ担任の女性(32)は「健康や人間関係、言語などを重視する教育内容は、(幼稚園や保育園と)大きく変わらない。節分の豆まきなど、日本特有の風習を教えることもある」と説明し、「学芸会などの行事で成長し、朝鮮の歌や楽器に触れ、朝鮮人として生きる第一歩を踏み出す子どもの姿を見るのが喜び」と語る。

■少子化で減り続ける園児、無償化対象外が拍車

 しかし、朝鮮学校幼稚班の園児は、少子化などで減少傾向が続いている。同校幼稚班は12年度に32人が在籍したが、21年3月時点の園児は14人で、うち年長児が8人。入園予定は3人で、今年4月には全園児が9人に減る。府内でもう一つの京都朝鮮第二初級学校付属幼稚班(右京区)も、12年度は24人だったが、今年4月に11人となる見通しだ。

 園児が減る大きなきっかけとなったのが、19年10月に始まった国の「幼保無償化」だ。子育て世代の支援などを狙いに始まったが、朝鮮学校など外国人学校の幼稚班・幼稚部は、国が定める教育要領とカリキュラムが異なることなどを理由に対象外とされた。

 京都朝鮮初級学校付属幼稚班の保育料は、年21万6千円。京都市内の保育園は年平均約24万円(幼保無償化前の18年度)のため、相対的に家計負担は軽かったが、幼保無償化で一気に「割高」になった。同校の文峯秀(ムンボンス)校長は「経済的な負担で入園を見合わせた人もいる」と打ち明ける。

■「幼い頃から自分が何者かを知ることは、きっと人生のプラスになる」

 保護者からは疑問の声が上がる。長男が朝鮮中級学校、次男が幼稚班に通うパート従業員の40代女性は「『公立』と比べたら家計負担はかなり大きい」とした上で、「民族の言葉や文化を感じてほしいし、(民族衣装の)チョゴリも着せたい。幼い頃から自分が何者かを知ることは、きっと人生のプラスになる。それは日本人も在日も同じなのに、無償化から外され、子どもの価値がゆがめられたように感じる」と話す。

 こうした状況を受け、国は新年度から、幼保無償化の対象外でも、外国人向けの園や、自然体験を重視した幼少期教育を行う「森の幼稚園」など、一定の基準を満たす施設に通う幼児の保護者に、最大で月2万円を支給する制度を始める。朝鮮学校の幼稚班も対象になる可能性があるが、制度活用は各自治体の裁量に委ねられている。京都市は「活用するかは検討中」という。

 文校長は「無償化の対象外となった2年間が打撃となった。友だちの少なさを懸念し、日本の園を選ぶ保護者もいるかも知れず、負の連鎖になれば幼稚班の存続に関わる」と危惧している。