お披露目の式典で、音楽と光の演出に合わせて水が飛び出す「音楽噴水」。新型コロナウイルスの影響で現在は休止している(2010年8月11日、京都市下京区・京都駅北口広場)

お披露目の式典で、音楽と光の演出に合わせて水が飛び出す「音楽噴水」。新型コロナウイルスの影響で現在は休止している(2010年8月11日、京都市下京区・京都駅北口広場)

我が子のように音楽噴水の維持のため寄付を続けてきた上田さん。今後10年の維持費用として追加で4千万円を寄付した

我が子のように音楽噴水の維持のため寄付を続けてきた上田さん。今後10年の維持費用として追加で4千万円を寄付した

 京都市下京区のJR京都駅北口広場にある「音楽噴水」の維持に役立ててほしいと、中京区の元会社社長の男性(87)が市に4千万円を寄付した。男性は噴水の設置を市に提案した「生みの親」で、これまでにも4千万円以上を維持費として負担してきた。現在、噴水は新型コロナウイルスの影響を受けて休止中のため、再び駅前を明るく照らす日を男性は心待ちにしている。

 上田英(すぐる)さん。上京区出身で、35歳の時に山科区で創業した歯科医療機器メーカーを40年以上経営してきた。退任を控えた2010年8月、「市民の憩いの場を作ることができれば」と、2億円かけて音楽噴水を製作し、市に寄贈した。噴水は京都駅前の地下街「ポルタ」の屋上に設置され、夕暮れ時にクラシックや祇園小唄の音色と光に合わせて水が噴き出す様は、帰宅途中の通勤客や観光客を魅了している。

 しかし、維持は一筋縄ではいかなかった。電気代や保守代など年間にかかる経費は約1千万円。当初は市と上田さん側、ポルタの運営会社の3者が約330万円ずつ負担する予定だったが、市財政が厳しく、市議会で10年9月、予算執行を事実上差し止める決議が可決された。

 市は市内企業に協賛金を募って負担金を捻出しようとしたが、思うように集まらず、結局、上田さんが不足分を負担する状態が続いた。自身がいなければ維持が困難な状況に、「もうやめよう」と思うこともあったが、「せっかく続けてきたのにもったいない」と周囲から背中を押されて今回、今後10年の維持費として4千万円の寄付を決めた。

 噴水は緊急事態宣言が発令された昨年4月から停止しており、現在はリニューアルに向けて準備中。上田さんは「もっと多くの人に噴水のことを知ってもらい、市民の心を癒やしたり、観光客をもてなしたりする役に立ちたい」と話している。