保育園入口の路上に設けられたキッズゾーン(大津市におの浜2丁目)  

保育園入口の路上に設けられたキッズゾーン(大津市におの浜2丁目)  

3月に防護柵が整備された交差点。近くには瀬田東児童クラブがあり、歩行者の安全対策が必要だった(大津市一里山3丁目)

3月に防護柵が整備された交差点。近くには瀬田東児童クラブがあり、歩行者の安全対策が必要だった(大津市一里山3丁目)

瀬田北小近くの交差点付近に整備されたグリーンベルト(大津市大将軍1丁目)

瀬田北小近くの交差点付近に整備されたグリーンベルト(大津市大将軍1丁目)

 大津市で2019年5月、散歩中のレイモンド淡海保育園(同市萱野浦)の園児ら16人が死傷した交通事故後、市が保育園や小学校周辺の危険箇所などで進めていた安全対策工事が3月末までに完了した。新型コロナウイルス感染拡大の影響などで当初の目標より約1年遅れた。一方、事故のない社会の実現に向け、市が制定を目指す交通安全条例は協議が進まず、保育の最前線に立つ現場からは早期の制定を求める声が上がっている。

 市は事故後、市内の全ての保育園や幼稚園の散歩コースを、園や住民、警察などと点検した。事故2カ月後の同年7月には全国に先駆け、幼稚園や保育園周辺でドライバーに注意を呼び掛ける路面表示「キッズゾーン」の設置に着手。要望があった幼稚園や保育園計162園周辺の498カ所で、3月29日までに設置し終えた。

 さらに、園や小学校の散歩コースの危険箇所も抽出。814カ所に金属パイプ状の防護柵(ガードパイプ)や、路側帯に沿って緑色の線を引き目立たせる「グリーンベルト」を新設したほか、側溝にふたをして歩道スペースを広げたり、交差点を目立たせたりするカラー舗装なども、3月中旬までに完了した。

 昨年感染が拡大したコロナの影響などで工期が延びたが、市道路・河川管理課は「指摘された危険箇所の整備は何とか終えることができた。今後も関係機関と連携して定期的に合同点検を実施し、危険な場所をなくしたい」とする。

 一方、市の交通安全対策の大きな指針となり、20年度内の制定を目指した条例は、内容についての議論を深める必要性が出ている。

 条例は、園児事故の被害者家族有志の要望を受け、越直美・前市長が19年12月、安全な交通環境づくりに向けて市民と行政が連携する仕組みを盛り込み制定する方針を表明。罰則がない「理念条例」で、市が昨年1月に示した骨子案では、キッズゾーンの設置推進や通学路・散歩コースでの安全点検強化、事故が起きた5月を交通安全月間とすることなどが示された。

 しかし、市自治協働課によると、昨年1月の市交通安全対策会議で、「事故の当事者となる割合が高い高齢者らへの対応も盛り込むべき」などと関係機関からの指摘があった。骨子案の修正に向けて、県警や市議会などと協議する場を適宜設ける必要があるが、コロナ禍でこの1年は一度も開催できず、大津署や大津北署との打ち合わせを1回実施したのみにとどまるという。同課は「市としてコロナ禍への対応を優先せざるを得なかった。内部では本格的な調整を進めており、新年度中に議会に提出し、成立させたい」とする。

 悲惨な事故の教訓を踏まえ、市がどのような条例を制定するか、注目される。レイモンド淡海保育園への支援をしてきた県保育協議会の中西健会長(67)は「事故を経験した大津市にとどまらず、他の地域の保育にも影響する条例。関係者の意見をきちんと取り入れて内容を深め、できるだけ早く制定してほしい」と求めている。