日本政府が国連総会に提出した核兵器の廃絶を目指す決議案の内容が明らかになった。

 兵器用核物質の生産自粛や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた呼び掛けは含まれたが、昨年までは記載があった「核使用による壊滅的な人道上の結末への深い懸念」との表現は削除された。

 唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴えてきた日本の主張は、さらに後退したと言わざるを得ない。

 日本は1994年から、国連総会の第1委員会(軍縮)に核廃絶決議案を毎年提出している。決議に拘束力はないが、日本の決議案は25年連続で採択されてきた。

 支持されてきた背景にあるのは、被爆国としての非核理念だろう。核の使用がいかに多くの命を奪い、傷つけるかという「核の非人道性」に基づく訴えが、国際社会から賛同を得てきた。その象徴が、核使用の結末に対する「深い懸念」ではなかったか。

 決議案は、国連加盟国の6割を超える賛成で2017年7月に採択された核兵器禁止条約についても3年連続で言及しなかった。「核の傘」を提供する米国への配慮からだろう。

 同条約を巡っては、拒否する核保有国と核軍縮を目指す非保有国の亀裂が深まっている。日本は双方の「橋渡し役」を自負するが、同条約にいまだ署名しておらず、軸足は保有国側へさらに傾いていると受け取られても仕方がない。

 来年は国際核秩序の礎石とされる核拡散防止条約(NPT)の発効から50年の節目で、春には同条約の運用状況を検討する5年に1度のNPT再検討会議を控える。

 決議案の「後退」は、会議の成功に向けて核保有国と非保有国の双方が賛成しやすい文面を狙ったのだろうが、核削減や将来の核廃絶につながるのか。賛成国の多さを成果とするような決議案提出のあり方は見直す必要があるのではないか。

 米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効し、期限まで1年半を切った新戦略兵器削減条約(新START)を両国が延長するのかも見通せない。

 中国が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)配備を進め、イラン核合意も崩壊危機にあるなど、核軍拡競争が現実味を帯びている。

 「核の傘」を優先する安倍晋三政権は対米同調ばかりが目立つ。いま一度、非核の理念を見つめ直し、国際世論を巻き込んで核廃絶をリードしなければならない。