寺院に足を踏み入れると美しい仏像や壁画などの組み合わさった宗教空間を目にすることができる。日本に限らず世界中で、宗教と美術は不可分の形で連綿と続いてきた。美術史家の視点からは、そのような歴史を織りなす「糸」の一部は、千年以上前のシルクロードの仏教遺跡まで伸びている一方、現在の日本の人気漫画「鬼滅の刃」にも結びついているという。さまざまな美術作品があやなす「聖なる世界」について、京都大白眉センターの檜山智美特定助教に語ってもらった。

 ―シルクロードの美術史がご専門ですね。

 「現在の中国西北部で古代に栄えた『クチャ』という仏教国家の石窟寺院を研究しています。石窟寺院は4~8世紀ごろに作られ、今は新疆ウイグル自治区のクチャ近郊に約800が点在し、うち3分の1ほどには壁画が描かれています」

 「私は大学2年の春休みに東京でたまたま、ドイツの探検隊が収集したクチャの壁画のポスターを見て以来、シルクロードの美術の世界に魅せられてきました。もともと絵画や漫画などを見るのが大好きだったのですが、クチャの壁画によって生涯の研究テーマに出会いました」