限られた条件の下で、人が運転しなくてよい車が先月、世界で初めて市販された。
自動運転における「レベル3」の機能を搭載した国産の高級セダンで、ドイツのメーカーも今年中に追随する予定だ。
一般のユーザーにとっては、驚くほかない車の進歩である。
各国の関連企業はすでに、本格的な無人運転となる次の段階「レベル4」車の開発に、しのぎを削っているという。
無人運転は、運転手不足の過疎地で、住民用のバスなどに導入されることなどが期待されている。人の運転によって起きる事故の削減にも、有効とみられる。
こうした画期的な技術革新を、市民社会が受け入れていくには、安全やサービスの質を確保するための環境整備が、欠かせないのではないか。
警察庁の検討会が先週、「レベル4」の実用化に向けた指針を示す報告書を初めてまとめた。
まず、無人運転のシステム運行者となるバス会社や自治体に対して、警察の事前審査を受けるよう求めている。
技術面で支障がないだけではなく、地域と連携できているかどうかも調べ、導入計画の可否を判断するそうだ。
新たなシステムを稼働させるのだから、当然のことだろう。
また、遠隔監視所を設け、トラブルや事故に備える必要があるとした。
監視所を担当する職員は、運行に関する知識に加え、道路事情や交通法規に通じていなければならないはずだ。
監視所の在り方とともに、適切に対応できる人材の確保についての指針を明らかにしてほしい。
無人運転で懸念されるのは、システム障害が起きた場合の対処の仕方と、事故発生時の責任主体が不明瞭な点である。
警察庁は、引き続き検討する方針だ。
報告書の指針に加えて、安全を担保するための具体策と、必要な法整備の項目を、早めに示していくべきだろう。
政府は、無人運転のバスによる住民移動サービスを来年度にも始め、その後、自家用車に普及させる戦略を掲げている。導入に向けて、前のめりの姿勢が目立つ。
昨年、大津市などの自動運転バス実証実験では、軽微な接触事故が報告されていなかった。実験に関する情報を逐一公表し、市民の信頼を得ることも大事だ。