国民のプライバシー保護が置き去りのままではないか。

 デジタル庁創設を柱とするデジタル改革関連法案が、今週にも衆院を通過する見通しとなった。政府・与党は4月中の成立を目指すとしている。

 菅義偉首相の肝いりの施策で、新型コロナウイルス流行の下、一律10万円給付の混乱などで問題となったデジタル化の遅れの挽回を掲げている。

 ただ、一連の法案は単に行政システムの改革だけでなく、個人情報の扱いを大きく変える内容だ。

 これまでの衆院審議で、デジタル情報の集約と活用促進が強調される一方、情報の漏えいや乱用への懸念は拭えていない。

 デジタル化の名の下、個人情報の保護を巡る国民の不安を残したまま、拙速に押し通すことがあってはならない。

 関連法案は、デジタル庁設置を含む新法案5本と、個人情報保護法などの改正案約60本を束ねたものだ。一括審議で通そうというのは乱暴で、幅広い論点が深められずに生煮えの感が否めない。

 大きな心配が、国や自治体が持つ個人情報をデジタル庁に集約して一元的管理を強めることで「監視社会」につながらないかだ。

 集まる情報は、政府が特定秘密保護法に基づき秘密指定すれば公開されない。本人が開示請求できる対象も限られ、政府が困難といえば情報を隠すことができる。

 政府は、個人情報保護委員会で乱用を監視すると説明するが、指導・勧告止まりで強制力を伴わない。これでは歯止めになるまい。

 地方自治体が独自に定めてきた個人情報保護条例を全国で統一化することにも懸念が強い。

 行政機関の間で円滑に情報をやり取りするためというが、各自治体からは厳格な情報保護ルールが後退しかねないと危惧する声が出ている。

 情報システムの標準化も進められるため、独自の施策を縛りかねないとの不安もある。各自治体による上乗せの可否を政府は明確に説明していない。

 関連法案は、マイナンバーカードを預金口座とひも付けし、健康保険証や運転免許証として使うことも盛り込んだ。

 なし崩し的な利用領域の拡大であり、個人情報流出のリスクも大きく膨らむ。先月に始まった保険証としての試験運用でも不具合が相次いだといい、看過できない。

 情報保護への国民の信頼がなければ、利活用も進まぬことを政府は重く受け止めるべきだ。