人見さんの母孝子さんが亡くなった後、車いすで焼香に訪れた時の水上さん(2001年11月、京都市中京区・ギャラリーヒルゲート)

人見さんの母孝子さんが亡くなった後、車いすで焼香に訪れた時の水上さん(2001年11月、京都市中京区・ギャラリーヒルゲート)

水上さんが描いた天安門事件の記録画。公開される機会はまれという

水上さんが描いた天安門事件の記録画。公開される機会はまれという

 「雁の寺」「五番町夕霧楼」など京都を舞台にする名作をつむいだ作家水上勉さん(1919~2004年)の生誕100年を記念する展覧会が、京都市中京区のギャラリーヒルゲートで開かれている。水上さんの提案で産声を上げた画廊に、訪中時に遭遇した天安門事件を題材にした水上さんの書画が並ぶ。

 ヒルゲートを経営する人見ジュン子さん(69)は公務員時代の1977年、講演を依頼したのを縁に水上さんとの親交が始まる。人見さんの母孝子さんが営むゴルフ用品店の将来を案じた水上さんが「自分の書画を提供するから」と画廊への転業を勧める。88年、ヒルゲートは水上さん作の書画や骨壺の展示を幕開けにオープンする。人見さんが継いでからも企画展を重ね、水上さんが亡くなるまで交友は続いた。

 訪中作家団員として北京滞在中の89年、投宿していたホテルから天安門事件の惨状を目撃した水上さんは帰国直後に心筋梗塞で緊急入院し、病室で絵筆を取る。

 展覧会は、竹紙に墨書するなどした事件の記録画9点を展示する。画廊の開店7周年の祝いに水上さんから送られた手紙も併せて公開する。文面には「北京にいた当日のことを、病院の集中治療室で描いた『思い出』の作品」「歴史は記憶しなければいけない」と記録画への強い思いがつづられている。

 会場には秋野不矩(ふく)さん、加藤登紀子さんや、水上さんを中心とする陶芸グループ「赤土舎」など水上さんと親しかった文化人22人の作品も。人見さんは「文豪であると同時に、不義と差別に心を痛め、弱者に温かなまなざしを向けた人。土をひねり、竹人形芝居を主宰した多彩な活動を感じてほしい」と話す。

 10日まで。正午~午後7時(10日は同5時まで)。入場無料。8日は水上さんの誕生日。