被災地の元ボランティアからの手紙に目を通す佐藤さんと愛犬のサン(京都市中京区)

被災地の元ボランティアからの手紙に目を通す佐藤さんと愛犬のサン(京都市中京区)

 東日本大震災後に宮城県内で保護された犬を引き取った京都市中京区の貸自転車業佐藤研二さん(67)が、サンと名付けた犬と8回目の「3・11」を迎える。昨秋試みた元飼い主探しは実らなかったが、被災地の人々との出会いにつながり、老いの進む愛犬とともに8年の歳月をかみしめている。

 佐藤さんは2011年8月、被災した迷い犬などのために臨時に設けられた宮城県内の保護センターでサンと出会った。引き取って一緒に暮らすうちに「元の飼い主が会いたがっているのでは」との思いが募り、昨年10月、大津市と同県南三陸町の両社会福祉協議会の橋渡しでサンの写真パネル展を同町で開いた。元飼い主につながる情報の提供を呼び掛けるためだった。

 佐藤さん自身も会場に行き、被災当時にサンが保護された登米市内の災害公営住宅でチラシを配った。住民の中にはやはり飼い犬と離ればなれになった男性がいたが、サンとは別の犬だった。佐藤さんのことは地元の新聞にも掲載され、励ましの手紙が寄せられたものの、元飼い主は結局分からなかった。

 今年2月、佐藤さん宅に一通の手紙が舞い込んだ。差出人は同県多賀城市の看護師西塔久美さん(51)。西塔さんは昨年10月、河北新報に載ったサンの茶色い毛並みと垂れ耳に、保護センターにいた犬だと気づき、パネル展を訪れていた。西塔さんは当時、同センターで犬の散歩のボランティアをしており、特に人なつこいその犬を、飼い主が見つからなければ引き取ろうかと思っていたという。佐藤さんへの手紙には、西塔さんの娘が残していたサンの写真が同封されていた。

 「自分と同じようにサンをかわいがっていた人がいたことを知り、胸が熱くなった」と佐藤さん。昨年、7年ぶりに訪ねた宮城県では、いまだに残る震災の爪痕を目にし、復興とは何かと考えさせられたという。「サンのおかげでいろいろな人と巡り会えた」。寄せられた手紙に返事を書き、感謝を伝えている。