県立産業文化館に描かれていた当時の「舎利供養」。両翼の下部に5枚ずつ小さな絵が描かれている部分が失われた「欄間」(琵琶湖文化館提供)

県立産業文化館に描かれていた当時の「舎利供養」。両翼の下部に5枚ずつ小さな絵が描かれている部分が失われた「欄間」(琵琶湖文化館提供)

 京滋にゆかりのある宗教画家杉本哲郎(1899~1985)が描き、現在は休館中の滋賀県立琵琶湖文化館(大津市打出浜)にある壁画「舎利供養(しゃりくよう)」について、遺族が保存を強く求めている。作品の一部を県がすでに破棄していたことが判明し、遺族は「大変失望している。残った壁画の移設を県に求める」と訴えている。


 杉本は大津市生まれの京都市育ち。1937年に渡航したインドで古代仏教美術に影響を受け、世界の十大宗教を描く独自の画風を確立。国内外で活躍した。


 「舎利供養」は3面構成の壁画で中央と左右両翼の絵を合わせると幅14メートル、高さ3・7メートル。釈迦(しゃか)の遺骨の舎利を菩薩や天女が供養する姿が描かれている。49年、県知事の依頼で県立産業文化館(武徳殿)に描き、61年に琵琶湖文化館に移設された。81年、壁画は館内の動線変更で非公開になった。


 一方、武徳殿に唯一残っていた装飾部分の「欄間」は2018年、「移設は困難」と判断した県によって建物ごと取り壊された。


 県は今年3月、文化館の後継施設を大津港近くに新築することを決定したが、文化館を取り壊すか否かや壁画を移設するかどうかは検討していない。ただ、壁画の移設については費用や技術面で課題があるとみられる。杉本の孫の太郎さん(53)は今月13日に記者会見を開き、「このままでは壁画にとって良い未来は来ない。県の手で壁画を別の場所に移設を」と訴えた。