芸能や映像、美術など創作や表現に携わる人たちの働き方に過酷な実態があることが相次いで明らかになっている。

 フジテレビのリアリティー番組「テラスハウス」に出演していた木村花さん=当時(22)=が昨年5月、出演後に亡くなった。

 木村さんは番組での振る舞いについてネット上で激しい中傷を受け、番組を降りることを希望していたが辞められず、苦悩を深めていたという。

 母響子さんによると、テレビ局などの制作側と賠償責任などを含む誓約書に署名していた。「辞めると賠償を求められる誓約が娘を追い詰めた」と響子さんは訴える。

 日本の創作や表現の分野では、仕事を発注する側と受ける側の「対等でない契約」の慣行が根強く、さまざまな問題を引き起こしている。

 例えば、俳優は芸能事務所と業務委託契約を交わすが、報酬や待遇は提示されたものを受け入れざるを得ないことがほとんどという。

 その一方で、危険なシーンの撮影なども事実上、拒めない。発注者の指示に基づいて働くのに、個人事業主扱いのため、事故が起きても労働災害の認定を得るのは極めて難しいという声がある。

 対等でない関係は、パワハラや性的嫌がらせの原因にもなっている。

 美術作家らでつくる「表現の現場調査団」が昨年12月~今年1月に実施した調査では、創作・表現に携わる1195人が何らかのハラスメントを経験したと回答した。

 そのうち6割がフリーランスで、労働条件や報酬などが不明のまま働かされたとの訴えが多かった。

 創作現場での従属的な関係を示している。

 しかし、こうした日本的慣習は時代遅れになりつつある。

 日本と同様の慣行があった韓国の映画業界では近年、長時間の撮影禁止規定や、俳優やフリーのスタッフの社会保険加入、セクハラ防止の教育などが導入された。

 世界的ヒット作を次々と発表する背景には、俳優らの処遇改善の効果もあると指摘される。

 日本政府も3月末にフリーランスとして働く人の処遇の改善策として保護指針をまとめた。

 発注者が支払いを遅らせたり一方的に仕事を取り消したりすれば、独占禁止法上の優越的な地位の乱用になると明記した。

 個人事業主なども労災認定される労災保険の「特別加入制度」について、俳優など幅広い芸能従事者も適用対象にした。

 放送や映画演劇などの事業者に対し、俳優らの事故防止を徹底するよう求める通知も出した。

 ただ、法的拘束力はなく、実効性の確保が課題といえる。

 創作や表現に従事する人には「好きでやっている」と我慢を容認する考えが根強いが、もはや通じない。

 不当な扱いやハラスメントがない現場からこそ、素晴らしい作品が生まれるという認識を広めたい。