日本学術会議が、組織の在り方を巡る報告書素案を公表した。あすから始まる総会で正式決定し、政府に提出する。

 焦点の組織形態は、国の特別の機関として、政府からの独立と自主を法で保障された現行制度を「変更する積極的な理由を見いだすことは困難だ」と結論付けた。政府はその意向を尊重すべきだ。

 時代の要請に応じ、不都合があれば組織改革は必要であろう。

 しかし今回は菅義偉首相が昨年10月、新会員候補として推薦された6人の任命を拒否したのが発端だ。政府や自民党が強引に組織改革を迫るのは、世論の批判をかわす論点のすり替えではないか。

 優先すべきは任命拒否問題の解決である。首相は法の趣旨に沿って拒否を撤回し、学術会議との信頼関係の再構築を急ぐべきだ。

 素案は政府の要請を受け、まとめられた。学術会議をどのような形で設置すべきかを検討して、公的な資格や財政基盤、会員の選考の独立性といった五つの要件を満たす必要があると分析。現行組織は、国を代表するアカデミーに必要な要件を満たしており、「役割を果たすのにふさわしい」と指摘した。一方で独立行政法人や公益法人への移行は「機能を発揮できず不適切」などと評価した。

 ただ、学術会議の役割や意義を十分に理解している国民は多いと言えない。素案に掲げた会員選考の透明性確保や、科学的な助言機能を強化する改革などに積極的に取り組んでもらいたい。

 素案に対し、政府から独立した法人格を持つ新組織への移行を求める自民党は「組織形態の見直しに消極的だ」と批判している。背景には学術会議への根強い不満が党内にあるとみられるが、自民党の改革案で独立性、中立性を十分に担保できるのか疑問だ。

 任命拒否について政府は「任命権者である首相が最終判断をし、手続きは既に終了」(加藤勝信官房長官)とするが、学術会議は納得していない。当然であろう。

 任命を拒まれた6人はいずれも人文・社会科学系で、その分野の約1割が欠員のままだ。長引けば政策提言などの活動に支障が生じる。放置するわけにはいかない。

 首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的観点から判断した」と繰り返し、いまだ拒否理由を明らかにしない。「説明できることと、できないことがある」と開き直った発言もあったが、国民に説明できないことはしてはなるまい。不誠実な対応のままでの幕引きは許されない。