約1世紀の歴史に幕を閉じ、10月末で閉店するうどん・そば店「常盤」(京都市東山区祇園)

約1世紀の歴史に幕を閉じ、10月末で閉店するうどん・そば店「常盤」(京都市東山区祇園)

 京都市東山区祇園で約1世紀にわたって営業してきたうどん・そば店「常盤」が10月末でのれんを下ろす。カツオや昆布のあっさりした京風だしは、多くの芸舞妓や地域住民に親しまれてきた。3代目店主の山田淳さん(72)は「祇園の人たちのおかげでここまでやってこられた。自分の代で店を閉めるのは寂しいが仕方がない」と名残を惜しむ。

 1922(大正11)年に創業した常盤は、当初から出前の配達に力を入れてきた。祇園という場所柄、お茶屋からの注文が多く、出来たてのうどんやそばは座敷前の芸舞妓らのおなかを満たしてきた。
 名物メニューは、鶏肉やホウレンソウなどさまざまな具材を味わえるうどんすきに似た「常盤きしめん」。きしめんのように平べったい手打ちのうどんを、常連客が親しみを込めてそう呼ぶようになったのが名前の由来という。香りとコクのある自慢のだしは、四国のかつお節や北海道産の昆布などから丹念に作り上げている。
 長年、大学生のアルバイトたちが出前を担ってきたが、5年ほど前に最後の一人が就職で店を卒業したのを機にやめた。近年は、山田さんも加齢によって体が思うように動かなくなってきた。店を継いでくれる人を探したが見つからず、今年4月にやむなく閉店を決意した。
 「自分が一番おいしいと思うだしのたて方をずっと守ってきた。うちのだしと麺を、1世紀近くも味わってもらえて本当にありがたい」と、山田さんは謝意を表する。
 店内には、西川きよしさんや藤山直美さんら有名芸能人のサイン色紙が所狭しと並ぶ。常連客の中には親子2代や50年以上にわたり通い続ける人もいる。閉店の知らせを聞きつけ、花街の思い出の味をもう一度楽しもうと、多くのなじみ客が訪れているという。