被災してから1カ月以内の生産再開は、奇跡的だという。

 半導体大手ルネサスエレクトロニクスが、先月19日の火災で製造を停止していた那珂工場(茨城県ひたちなか市)について、すでに再稼働し、来月中の回復を目指すと明らかにした。

 ルネサスは、自動車向けの半導体「マイコン」市場で、高いシェアを占めている。

 同工場は、10年前の東日本大震災でも被害を受けた。その際に、マイコンの供給不足に陥った主要自動車メーカーが数カ月にわたって減産するなど、多くの企業にダメージが広がった。

 今回の生産停止に危機感を抱いたメーカーは、従業員を派遣して復旧を支援した。

 火災前と比べた生産量は、今週中に30%、今月中に50%、来月中には100%に引き上げられるそうだ。

 日本の「ものづくり」への悪影響が、当初の見込みより少ないことを願いたい。

 ただ、火災の原因については、いまだに特定されていない。同じような事態を繰り返さないためにも、解明を急ぐべきだ。

 10年前の被災後、部品調達が滞ったことを教訓に、各メーカーはマイコンを調達するサプライチェーン(供給網)を、見直したはずである。

 ところが、在庫を増やしていたので、影響の目立たないトヨタを除き、売上高予想を下方修正したり、減産に追い込まれたりするメーカーが出ている。対応に不備があったのだろうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で人の往来が減り、通信量が膨らんでデータセンターの増強が急務となっている。第5世代通信システム(5G)スマートフォンの需要も高まった。これらに必要な半導体が、世界的に不足する状況が続いている。

 このため、被災した工場の代替生産が、簡単でなくなったことも背景にあるようだ。

 半導体の調達先を、どれだけ確保しておくかが、自動車業界はもちろん、あらゆる産業に問われているといえる。

 政府は先月、半導体産業の強化戦略を練る識者らの検討会議を立ち上げた。金融や税制、制度面の支援を総動員して、安定供給の維持を狙う。来月にも、政策の方向性をとりまとめる予定だ。

 ルネサスの火災を受け、「付け焼き刃」のような対応をするのではなく、本腰を入れて課題の解決を図ってもらいたい。