東日本大震災でLNGを受け入れてガスを製造する施設に押し寄せる津波(仙台市宮城野区)=同市ガス局提供

東日本大震災でLNGを受け入れてガスを製造する施設に押し寄せる津波(仙台市宮城野区)=同市ガス局提供

 LNG基地(タンク容量18万キロリットル)は、舞鶴市大波下の埠頭(ふとう)でシミュレーションを実施し、投資額は650億円に上った。投資額を抑えるため、舞鶴湾に浮体式のLNG基地を設置する手法も検討したが400億~500億円が必要で、さらに運営費が陸上よりかかるほか、大型船が通る湾内のしゅんせつや自衛隊などとの航路調整といった課題が山積。研究会は19年2月を最後に開かれていない。

 府エネルギー政策課の硲伸二課長は「費用に見合った沿線の需要が見込めず事業化に至っていないが、企業との話し合いは進めている」と説明。舞鶴市の多々見良三市長は「パイプラインをつくれば、ルート上に産業が生まれる。災害時を考えれば、日本海側と太平洋側を結ぶパイプラインは国策として進めるべきだ」と強調する。

 東日本大震災後の原子力発電所の停止でLNGの需要は高まったが、菅義偉首相が昨年10月に「カーボンニュートラル」を宣言。LNGは化石燃料の中でCO2排出量は少ないが将来需要が不透明だ。硲課長は「脱炭素化は一気に進むわけではなく、LNGはエネルギー安定供給に必要。脱炭素化との整合性を図って構想を進めたい」。

 脱炭素社会の鍵としてあげられるのが、CO2を出さない水素だ。昨年末に発表された政府の「グリーン成長戦略」で重点分野とされ、発電や自動車の燃料などの利用で30年までに最大300万トンの導入を目指すとした。

 京都大の内藤克彦特任教授(エネルギー経済学)は「ガスパイプラインで水素を流すことは可能で、効率を考えれば水素社会実現に不可欠。欧米に比べて日本には広域的なパイプライン網がなく、整備に国の積極的な支援が必要」と指摘する。

 巨大地震への対応やメタンハイドレート、脱炭素化…。パイプライン構想実現には激変する世界や国のエネルギー潮流を見極めた、戦略の練り直しが不可欠となっている。