不在者投票用の封筒。新型コロナウイルスの感染患者の封筒はまとめて袋に入れるなどして対応する(彦根市役所)

不在者投票用の封筒。新型コロナウイルスの感染患者の封筒はまとめて袋に入れるなどして対応する(彦根市役所)

 新型コロナウイルス感染者の投票機会の確保が全国的な課題になる中、25日に投開票される滋賀県の彦根市長選でも、市選挙管理委員会が投票の受け付けに頭を悩ませている。市立病院のコロナ専用病棟の患者は不在者投票の仕組みで対応する一方、自宅や宿泊施設での療養者向けの投票所の設置は見送った。選管は「投票権は行使されるべきだが、人員面など現場の感染対策に限界があり、今の制度では難しさがある」とジレンマを抱えている。

 市選管は2月下旬、東京都選管の事例を参考に、選挙での感染症対策のガイドラインを作成。病院や老人ホームでの不在者投票は、感染者や立会人に手袋を着用してもらって投票用紙に直接触れるのを防ぐこと、他の患者らとは別にコロナ感染者の投票用紙入り封筒だけをまとめて容器に保管することなどを定めた。

 4月21日に市立病院で不在者投票を行ったが、感染者の専用病棟にいる複数の有権者のうち、投票の意思を示した患者はいなかった。投票者がいた場合、市は用紙入り封筒の容器について「付着したウイルスに感染力がある」(病院総務課)という72時間は開けずに開票日まで保管すると決めていた。24日まで投票は可能なため、患者が希望した場合は職員の代筆などで対応する。

 一方、市内の宿泊療養者や自宅療養者向けの投票所の設置は見送った。市選管は「(設置できるか)議論はしたが、職員の感染リスクもあり、人員を出す余裕がなかった。今のところ、投票を希望する療養者は、医者に相談して感染対策をしてもらった上で、一般の投票所に行ってもらうしかない」と悩む。

 彦根市長選と同じ25日に投開票される参院補選など全国の三つの国政選挙では、各自治体が屋外や療養ホテル内に投票所を設けるなど、いずれも療養者に投票機会を提供する。

 公職選挙法に新型コロナ療養者に関する規定はなく、同志社大の真山達志教授(行政学)は「選管の人員や療養中の有権者が多い国政選挙と違い、市長選で感染者に対応するのは難しい状況。障害者に認めている郵便投票の対象を拡大するなど、国は対応を急ぐべきだ」と指摘する。