「闇夜の底で踊れ」

「闇夜の底で踊れ」

 【書評・本屋と一冊 京都文芸同盟】〈大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月 「闇夜の底で踊れ」増島拓哉著/集英社 1836円〉

 良い意味で、「新人」という言葉からイメージする初々しさ皆無の、第三一回小説すばる新人賞受賞作。

 パチンコ台に向かう男が二人。片方は年金をつぎ込み、煙草(たばこ)を吸いながら、あたりめをしゃぶる歯の抜けた老人。もう片方はチューハイを呷(あお)りながら、負け続ける、無職、三五歳。何も生み出すことのない、惰性で成り立つこの二人の会話がもうどうしようもなく面白い。飽きることなくいつまでも読んでいられる。

 主人公は前出の三五歳、伊達雅樹、パチンコ中毒者である。ソープランドで出会った詩織に恋心を抱き、入れ込むようになる。金が底をついた伊達は、闇金業者に身分を偽って融資を受け、踏み倒す「闇金狩り」を繰り返す。やがて素性がバレて窮地に陥った伊達の前に現れたのは、暴力団の若頭の山本。実は伊達もかつては組員で山本とは兄弟分の関係だったのだ。山本の指示で怪しげな仕事に手を染め、得た金でさらに詩織にのめり込んでゆく伊達。そこに跡目をめぐる争いから発展した暴力団抗争が絡み、物語は思いもよらない方向へと進む。

 著者の視線は突き放しているようにも見えるが冷たいわけでなく、むしろ温かさすら感じる。作品に漂うユーモアは最後まで途切れることなく続き、展開の面白さを際立たせている。暴力と笑いをコテコテの大阪弁で包み込み、撹拌(かくはん)した強烈なデビュー作だ。