「杼」をかたどった開発中の和菓子。細部にこだわったという=山本さん提供

「杼」をかたどった開発中の和菓子。細部にこだわったという=山本さん提供

「西陣地域にただ一人残る杼職人長谷川淳一さん(左)と妻富久子さん。手前の道具が「杼」で、今も国内外から注文が途切れないという=京都市上京区

「西陣地域にただ一人残る杼職人長谷川淳一さん(左)と妻富久子さん。手前の道具が「杼」で、今も国内外から注文が途切れないという=京都市上京区

 京都市上京区の西陣地域で、西陣織の制作には欠かせない道具「杼(ひ)」を作る唯一の職人長谷川淳一さん(88)の功績を残そうと、地元住民たちが杼をかたどった和菓子の開発を進めている。長谷川さんに後継者はおらず、このままでは杼職人は絶えてしまう可能性が大きい。住民は「世界に誇れる技術が西陣にあるという証を残したい」としている。

 「杼」は織機の左右を往復して、経糸(たていと)の間に緯糸(よこいと)を通すための舟型の道具。長谷川さんは祖父の代からの仕事を受け継ぎ、1999年に国の選定保存技術保持者に認定された。15年ほど乾燥させて強度を上げた九州産赤樫(あかかし)を使った杼は手になじみやすいと、今も国内外から注文が途切れず、オーダーメードで制作を続けている。

 西陣織工業組合によると、かつて杼を作る業者は10軒余りあったが、現在は長谷川さん一人。堅い赤樫を削る作業は重労働で、長谷川さんは「習いたいと見学に来た若者もいたが、続かなかった」と話す。

 和菓子の開発に取り組むのは「西陣サロン」。住民約70人が地域活性化を目指して活動する。メンバーが、長谷川さんや杼の存在を後世に伝えようと話し合い、杼の形を再現しやすく、手にとってもらいやすい、和菓子にすることになった。

 メンバーで和菓子職人の山本宗禅さん(48)が開発を担当。杼の中央の糸を巻くための部品「杼子金(ひごかね)」と「木管(もっかん)」や、山型の中に「ツ」を書く屋号を描き、細部にこだわった。味わいも、地域色を出すため、地元老舗店の昆布を芋あんに加えた。芋とチョコレートを混ぜた生地で包むことで、昆布のうまみや塩分を引き立てたという。山本さんは「地元の銘菓にしたいという皆の思いに応えたい」と意気込む。

 開発費をクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で5月10日まで募っており、支援者には和菓子などを贈呈する。8月上旬の販売を目指す。
 サロンの活動について長谷川さんは「和菓子を通じて杼を知ってもらい、織物を手にとってもらう機会になればうれしい」と話している。