彦根市長選で、アパレルブランド経営の和田裕行氏が初めての当選を果たした。

 組織的な選挙を進めた現職と、過去3期市長を務めた元市議を破った。有権者は現市政の継続ではなく、転換を求めたといえる。

 「彦根をリセットする」と市政刷新を訴えた和田氏は、悪化する財政の一因となった大型事業を無駄遣いと批判してきた。政治経験はなく、行政手腕は未知数だが、市民の声を丹念に聞き、まちに新たな活力を注ぎ込んでほしい。

 取り組まなければならない課題は多い。まずは財政問題だ。

 計画から10年かけた市庁舎耐震補強工事は、消費税率引き上げに加え、東京五輪の影響で資材費や人件費が高騰、総工費は当初から約20億円膨らんだ。

 2025年滋賀国体(国民スポーツ大会)の会場となる施設建設費も約13億円増えた。今後も図書館とゴミ処理施設の建設が続く。

 2月発表の中期財政計画では財源への対応がない場合、22年度に市の貯金である財政調整基金が底をつき、実質収支が赤字になることが浮かび上がった。

 和田氏は「大型公共工事の内容を精査し、費用対効果の点から無駄がないか徹底的に検証する」としている。既存事業の見直しだけでなく、新たな歳入増へのアイデアも求められよう。民間で培った経営感覚を生かしてほしい。

 市政と市民との距離も縮めなければならない。現職の大久保貴氏は19年、11億円以上の歳出を削った当初予算案を議会に提出したが、反発を受けて否決された。夏の風物詩の彦根大花火大会中止や不登校対策の相談員削減、小学校児童用の机やいすの購入見送りなどが盛り込まれていたからだ。

 事業の見直しに当たっては、市民にとっての必要性を見極め、丁寧な説明と対話を重ねてほしい。

 観光では、国宝・彦根城の知名度を高めるため、市は世界遺産登録を目指している。しかし、世界文化遺産暫定リストに記載されて既に30年近くが経過し、市民の関心は薄らいでいるようにみえる。

 彦根城頼みではなく、市域の名所を周遊できる滞在型観光への転換も求められる。

 暮らしの足元は疲弊している。かつてにぎわった中心市街・銀座商店街(銀座町)は空き店舗が目立ち、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけている。

 命と生活を守る施策を最優先にしながら、活気あるまちを復活させる具体策が問われる。