集団予防接種によってB型肝炎を発症し、再発した患者の救済を巡り、国に損害賠償を求めることができる起算日が争点となった訴訟で、最高裁は再発時を基準とすべきとする判断を下した。

 賠償請求権が消滅したとして原告敗訴だった二審福岡高裁判決を破棄し、損害額を算定するため審理を差し戻した。

 自らは何の落ち度もなく、再発に苦しむ多くの患者の救済に道を開く画期的な判決だと言える。国は真摯(しんし)に受け止め、被害者との協議を急ぐべきだ。

 民法は、被害の発生から20年が経過する前でなければ賠償を請求できないとする「除斥期間」を定めている。原告の2人は1987年と91年にそれぞれ発症し、いったんは改善したが2004年以降に再発。いずれも提訴は最初の発症から20年以上が経過していた。

 最高裁判決は、原告のような慢性型B型肝炎の場合、どのような場合に再発するかは医学的に解明されておらず、発症時点で再発による損害賠償を求めるのは不可能だと指摘。質的に異なる損害が生じた再発時を除斥期間の起算点とすると結論づけた。

 再発の割合は10~20%と決して低くない。被害の実態を直視し、救済するための妥当な判断だ。

 最初の発症時を一律に基準とする国の主張を退けており、除斥期間の壁に阻まれてきたB型肝炎以外の被害者の救済につながる点でも評価できる。

 患者との和解協議を経て12年に施行されたB型肝炎特別措置法は、訴訟などの裁判手続きを経れば、症状に応じて国が給付金を支払う救済制度を設けている。ただ、発症から20年を超えると大幅に減額される仕組みだった。

 救済を急ぐ必要などから不完全だった制度を改善し、被害者の全面救済を実現する契機としなければならない。

 法務省によると、特措法の枠組みに基づき提訴している原告は今年1月末現在で累計約8万5千人で、うち約6万7500人とは和解が成立している。

 しかし、自分がB型肝炎にかかっているとは知らない無症状の患者も多くいるとされ、厚生労働省の推計では、給付金の対象は最大約40万人以上にもなるという。

 ウイルス感染の危険性が指摘されているのに、集団接種の現場では注射器の使い回しが長年にわたって続いた。救済制度の周知徹底と、潜在的な患者の掘り起こしは原因をつくった国の責務だ。