2019年の葵祭から(2019年5月15日、京都市左京区・下鴨神社)

<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは。料理研究家の小宮理実です。新緑がまぶしいこの立夏の時期は、お花の種類も豊富。フジにシャクヤク、サツキにショウブと、色とりどりなお花たちを目にするたびに、心が弾みます。

 私はこの時期のことを「じっとしていられない季節」と呼んでいます。京都では、あちこちでお祭りが始まるのです。こどもの頃は、親戚が集まって食卓を囲んだり、みんなで近所の神社のお祭りに出掛けたり。非日常な時間がうれしくて、朝からそわそわしていました。

 今月は京都三大祭りの一つにあたる葵祭です。今年(※2020年と2021年)は諸事情で行列行事「路頭の儀」が中止となりましたが、葵の葉を装束や牛車にあしらった行列は、平安時代へタイムスリップしたかのような優雅さで、あ~日本に生まれてよかった、京都って素晴らしいと思ってしまいます。

 お祭りの日によくいただくのが鯖(さば)ずし。昔、若狭から鯖街道を通って京都に届いた鯖は貴重品であり、今でもお祭りにぴったりなごちそうです。私がお台所を預かるようになってからは、鯖ずしの代わりにきずし(しめ鯖)を作り、それで手巻きずしをするようになりました。酢飯やすしのりと一緒に食卓に出せば、それぞれが好きに楽しむことができ、いくらでも食べられます。

 だし巻きはみんなが笑顔になるごちそうおかず。祖母や母の味を引き継いで私の味へ。作るたびに「今日のは甘いで」「辛いで」と、家族からのありがたい意見のおかげで料理の腕を磨いてこられたというものです。今が旬のフキは、豚ひき肉と一緒に炒め煮に。隠し味に酢を使っています。冷たくしてもおいしくいただけます。甘辛く仕上げた鶏の照り焼きは、誰もが好きな味。お弁当のおかずにも最適です。おつゆはささっと作れるものがうれしいので、温かいおだしに葉の柔らかい水菜、彩りにミョウガ、とろろ昆布をたっぷりのせた簡単おつゆ。とろろ昆布の万能さにありがとうの一品です。冷蔵庫にあるお野菜で気軽に作ってみてください。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

【2020年5月10日朝刊掲載】

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。