滋賀県が検討している「地域公共交通を支えるための新たな税制」(交通税)について、学識者でつくる県税制審議会(会長・諸富徹京都大大学院教授)が「導入可能性を検討していくべき」とする答申を県に提出した。

 地方のバスや鉄道のための新税を、県が独自に設ける方向性を認めたといえる。

 国内では耳慣れない交通税だが、海外には例がある。フランスでは交通インフラ整備や路線維持のため、地域内の事業所から広く徴税しているという。

 人口減少を背景に全国各地で不採算路線の廃止・縮小が進む中、乗客だけでなく県民や事業所など地域全体を受益者とみなし、負担を分かち合って路線を支える仕組みが必要ではないか―。そんな問題提起と受け止めたい。

 同審議会は今後、県から新たな諮問を受け、課税の方式などを議論する予定だ。交通税導入の前提として、審議会は、県が県民などとの「合意形成のプロセスを尊重すること」を条件にしている。

 パブリックコメントの募集や県議会の議決などが思い浮かぶが、今回はそうした通り一遍の手続きだけでは納税者に受け入れられまい。

 幅広い層、とりわけローカルバス・鉄道を利用しない人々にも理解を求め、対話する工夫が要る。対話とは名ばかりの、一方的な説明や形式的な意見交換であってはならない。

 一人一人が自分や地域の問題として身近に考えられるよう、知事をはじめ県職員には汗をかいてもらいたい。

 滋賀はマイカー移動中心の「車社会」といわれる。県は交通税を検討する理由の一つに、鉄道やバスなどが整っていないと感じる県民が多く、県政への不満の1位(2020年度県政世論調査)である点を挙げる。

 だがそれは、新たに税負担をしてでも交通路線の維持・向上を進めてほしいという声なのかどうか。もともと公営や補助金中心で地域交通を運営している欧州などとは異なり、国内では民営・独立採算制がベースだ。

 まずは会社側が経営努力を尽くしたかを問う声や、助成するにしても県の既存の財源から捻出すべきだといった声は当然出るだろう。

 三日月大造知事は今回の税制づくりで、「新しい自治の一つの可能性を切り開きたい」としている。なぜ新税でなければならないのか、根拠を示して議論を深める必要がある。県民の意見や疑問に応え、信頼を築かなくては「新しい自治」は見えてこないだろう。

 新型コロナウイルス禍で、私たちは通勤通学をはじめ移動が不自由になると、生活そのものが脅かされることを知った。地域交通の役割は大きいが、今のままの姿で維持することが住民の利益になるとは限るまい。

 次世代の公共交通のあり方を示すとともに、新たな価値やサービスを生み出し、地域社会に還元するための新税でなければ、受益感や納得感は広がらないのではないか。