菅首相(3月7日撮影、京都市左京区・国立京都国際会館)

菅首相(3月7日撮影、京都市左京区・国立京都国際会館)

 菅義偉首相は、新型コロナウイルスの影響が懸念される東京五輪・パラリンピックの開催可否の基準について、23日の記者会見などで京都新聞社を含む3人の記者から同様の質問をされたが、すべて明確な回答を避けた。自身が基準を持っているかどうかも答えず三たび「スルー」した格好。IOC(国際オリンピック委員会)が決定すると原則論に終始する姿勢に、識者から批判も上がっている。

 会見では、まず東京新聞の記者が国民の命を守る立場から、感染状況がどの時点でどんな数値になれば開催するか否か基準を示すべきと質問。首相は「開催はIOCが権限を持っている」と明確な答えを避けた。

 続けてジャーナリストの江川紹子さんが「IOCは日本国民の命や健康に責任を持っているものではない」として、中止する場合の判断基準を迫ったが、首相は「IOCがそれぞれの国のオリンピック委員会と協議した上で決定している」と論点をそらした。

 首相会見は内閣記者会主催だが、実態は1人1問に限られている。質問に首相が正面から答えず、問答がかみ合わなくても、その場で同じ記者がただすことは難しい。会見で指名されなかった京都新聞社は文書で「首相自身が開催可否の基準を持ち合わせているのか」「基準とすべき項目があるか」を尋ねた。

 28日夜に文書であった回答は「IOCは開催を既に決定しており、各国のオリンピック委員会とも確認している。感染対策を徹底し、安全・安心な大会を実現したい」としており、問いに答えたとは言えない内容だ。

 立命館大産業社会学部の権学俊教授(スポーツ政策論)は「開催契約上、日本は開催義務だけを持っていて、前もって中止とは言えない仕組みになっている」としながらも、「国民の7割が中止や再延期を求める中、原則的な答えでは、国民の不信や不安はますます募り、責任回避にしか見えない。国民の命と暮らしを守る指導者としては失格だろう」と厳しく指摘した。