「上等そうなタケノコが出そうなときは緊張するよ」と話す湯川さん

「上等そうなタケノコが出そうなときは緊張するよ」と話す湯川さん

穂先が黄色いタケノコ(手前)

穂先が黄色いタケノコ(手前)

「何本掘ったかなんてわからん」と湯川さんはほほ笑んだ

「何本掘ったかなんてわからん」と湯川さんはほほ笑んだ

 「洛西総局と言えば春はタケノコ」。京都の洛西地域に赴任し、はや半年。町のあちらこちらに「朝掘り」の文字と、ざるに盛られたタケノコが出現。「小学生が体験授業でやっているんだから、私も」と、農家に同行させてもらい、竹林へ分け入った。

 4月16日の小雨が上がった昼前、京都府長岡京市金ケ原金原寺の竹林に入った。足元は程よく柔らかい。協力していただいたのは湯川與之(ともゆき)さん(64)と泰子さん(57)夫妻。タケノコ農家として約40年、シーズンになると朝5時に起き、家族ら5人で昼過ぎまで掘っているという。

 手渡されたのは、ホリと呼ばれる専用の特殊な道具。乙訓の孟宗竹(もうそうちく)のタケノコ栽培は、秋にヤブに土入れし、2月下旬ごろから6月上旬にかけ地上に出る前に掘り上げるのが特徴。ホリは地域ごとに特有の形があり、農家では自分の身長に合わせたホリを持っていたという。身長166センチの私で鉄の部分の長さが90センチくらいがちょうどいい長さとのこと。左手で木柄の端を持ち、鉄棒部が付いている方を右手で握る。

 ホリは鉄製で一般に「鍛冶屋」や「野鍛冶」、「農鍛冶」と呼ばれる職人が作っていた。1940年代に乙訓には野鍛冶が12人いたと記録があるが、現在の所在は確認できなかった。

 湯川さんが手本を見せてくれた。小さな割れ目から出た穂先の周囲の土を、ホリで柔らかくほぐすようにリズムよく動き回る。刃先に集中し、タケノコの生える方向や大きさを見定めていく。どこが地下茎とつながっているか分かると、ホリで基部を突き切り掘り上げた。

 穂先を見つけた湯川さんに「これなら簡単に掘れる小さいのがあるわ」と、手伝ってもらいながら掘り進めた。「刃先が当たってるやろ」と聞かれても、全然分からない。「テコの原理で掘り上げてみ」と言われるがまま、一気にホリを押すと、小さなタケノコが出てきた。