<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは。料理研究家・小宮理実です。そろそろ雨の日も多くなる頃。一雨ごとに本格的な夏へ向かうのですね。

 雨の季節は香りが気になりだします。食にも暮らしにも、良い香りを取り入れて、気持ちを高めましょう。

 そろそろ実山椒(みざんしょう)が店先に並び始めました。わが家は多めに購入。枝から実をぷちぷち外して下ゆでし、食品保存袋に入れて冷凍庫へ。こうしておくと、一年中実山椒が使えるのです。作業の間、山椒(さんしょう)の香りが部屋中に広がり、自然からの贈り物に感謝の気持ちでいっぱいになります。

 今週は、実山椒や新ショウガなどを使った、香りを楽しむ料理を紹介します。

 「ごちそうひとりすき焼き」は、その名の通りのごちそう。すき焼き肉を、新タマネギと一緒に牛脂で焼いて、「実山椒の甘だれ」を回しかけ、最後に温泉卵をのせます。牛肉の脂とトロリとした卵の黄身の組み合わせが絶妙です。牛肉の脂の良しあしがものを言うので、こんなときは量より質。上質な牛肉をお求めください。ここで使う「実山椒の甘だれ」は、作り置きしておくと助かります。私はちくわの天ぷらにかけるのも好きです。

 「実山椒とかしわの焼いたん」は、実山椒とかしわ(鶏肉)を、皮から出る脂だけでカリッと焼き上げ、香りと歯ごたえを楽しみます。甘辛い味で仕上げた「ナスとモロッコインゲンの豚肉炒め」は、味を染み込ませたナスと歯触りの良いモロッコインゲンに豚肉の香りが加わり、ボリュームもある一品。ごはんも進むおいしさです。「豆苗(とうみょう)とベーコン炒め」は、朝のトーストにもぴったりです。

 「新ショウガたっぷりごはん」は、お揚げさんが隠れた名脇役、いい仕事をしてくれます。あえて油抜きをせずに加えてください。新ショウガは血流を良くして、体を温めてくれます。夏でも、心と体に冷えは禁物。いつも温めて優しい気持ちで過ごしていたいものですね。

 旬の食べ物から英気を頂き、6月も笑顔で過ごしましょう。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

【2020年6月7日朝刊掲載】

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。