<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは。料理研究家の小宮理実です。6月も後半に入り、和菓子の「水無月(みなづき)」をあちこちで目にするようになりました。「夏越(なごし)の祓(はらえ)」も目の前です。元日からちょうど半年に当たる6月30日は、いわばもう一つの大みそか。半年間のけがれを祓(はら)い清め、身も心もリセットしましょう。

 今年は7月1日より半夏生(はんげしょう)を迎えます。昔は半夏生までに田植えを終えて、ひと休みをしたそうです。関西ではタコをいただく風習が残っています。サバやうどんを食べて休息を取る地域もあるようです。今回は、そんなすてきな風習を踏まえた家庭料理を6品紹介します。

 夏越の祓に欠かせない和菓子の「水無月」は家でも気軽に作れます。上新粉と薄力粉に水を加えたものを生地にして、市販の甘納豆をのせて蒸し上げます。冷めたら、氷に見立て三角に切り分けましょう。かつて氷は献上品であり貴重なものでした。庶民の知恵と工夫から生まれた「水無月」。冷蔵庫で冷やすともちもちに。控えめな甘さにしています。

 「水無月」に欠かせない小豆は、その赤い色に邪気祓いの効力があるとされてきました。行事にはつきものの小豆ですが、わが家では「お疲れさま」の気持ちを込めて、月に1~2回はお赤飯を炊いています。炊飯器を使えば手軽に作れますよ。

 「冷たい夏越」は、「水無月」にちなんだ一品。三角に切ったしんじょうに、茅(ち)の輪に見立てたキュウリをのせて、冷たいおだしを張って涼しげに。お子さんに、なぜ三角なのか、なぜ茅の輪をくぐるのかなど、食卓で話題にしていただけるとうれしいです。

 「肉みそうどん」は、炒めた合いびき肉を豆板醬(トウバンジャン)とおみそで甘辛く味付け。歯触りの良いキュウリの細切りと紅しょうがをアクセントにしました。タウリンの宝庫、タコはさっぱりとした「タコとキュウリの酢のもの」に。針ショウガを忘れずに。「タコとセロリのガーリック炒め」はオリーブオイルとニンニクのスライスで健康アップ。白いご飯にも合うよう、仕上げにしょうゆを加えています。

 食を通して、古人の想(おも)いに触れてみる。今年も梅雨とともに、令和2年の半年が過ぎようとしています。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

【2020年6月21日朝刊掲載】

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。