国がようやく「赤木ファイル」の存在を認めた。

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を担当した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さん=当時(54)=は決裁文書を改ざんさせられ、2018年に自ら命を絶った。改ざんの経緯を克明に書き残したとされるのが、そのファイルだ。

 ファイルの有無さえも明らかにしなかった国が一転、方針を変えた。遅きに失したとはいえ、民主主義の根幹に関わる公文書改ざんの実態解明につなげてほしい。

 森友学園を巡っては近畿財務局が小学校予定地として、国有地を大幅に値引きして売却していたことが17年2月に発覚した。その後、安倍晋三前首相の昭恵夫人や政治家の名前を削除した文書改ざんなどが明らかになった。

 改ざんはなぜ行われたのか、なぜ自死に追い込まれたのか。真相に迫るため、赤木さんの妻が昨年3月、国と改ざんを指示したとみられる当時の佐川宣寿財務省理財局長に損害賠償を求め、大阪地裁に提訴していた。

 妻側は提訴時にファイルの提出を要請したが、国側はこれまで有無を含めかたくなに回答を拒んできた。しかし、地裁が回答するよう促したため、国はやむなく認めたのだろう。不誠実が過ぎる。

 財務省が18年6月に公表した調査報告書は、佐川氏が改ざんの方向性を決定づけ、理財局幹部らが昭恵夫人に関わる記述の削除など14件の改ざんを認めた。だが安倍氏への忖度(そんたく)などには踏み込まず、改ざんの動機や詳しい経緯といった疑惑の核心は不透明なままだ。

 国は佐川氏ら20人の処分で幕引きを急ぐばかりで、改ざん問題に真摯(しんし)に向き合おうとしない。妻は調査が不十分だとして第三者委員会による中立公正な再調査を求め、35万筆を超える署名を国に提出したが、これにも応じない。

 改ざんの発端は、安倍氏が国会で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことにある。責任の糾明なしに政治不信は解消しない。政権与党からは過去の問題とやり過ごす声も聞かれるが、疑惑をうやむやにすることは断じて許されない。

 国は不都合な内容ゆえにファイルの存在さえ認めなかったとみられ、今後、どの範囲まで開示されるかが焦点となる。誰が、何のため、どのように改ざんを指示したのか。遺族の思いに応えるのはもちろん、国民の関心事でもある。

 文字通り命を賭した「告発」を無駄にしてはなるまい。