来訪者に「火気厳禁」を呼び掛けている二条城内。重文の唐門(右奥)など木造建築物が多く立ち並ぶ=7日、京都市中京区

来訪者に「火気厳禁」を呼び掛けている二条城内。重文の唐門(右奥)など木造建築物が多く立ち並ぶ=7日、京都市中京区

 京都市内で5月26日夜に開かれる東京五輪の聖火リレーまで残り2週間余りとなった。市は新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、公道での実施を中止し、二条城(中京区)での無観客開催を大会組織委員会に要請している。世界遺産を舞台に「京都らしさ」の演出にこだわった形だ。ただ、実現すれば木造建築の近くを聖火の炎が行き交う前例のない取り組みになるため、市は城内での慎重なルート選びと防火対策の準備に奔走している。

 市内での聖火リレーは当初、二条城から御池通や川端通、二条通を経て岡崎公園(左京区)までの約4キロで行い、同公園で到着式典を開く予定だった。だが、公道に多数の観覧者が集まる感染リスクを懸念し、門川大作市長は4月21日、無観客開催に変更するよう府を通じて大会組織委に要請する方針を表明した。

 市は、リレー会場に二条城(約27万5千平方メートル)を選んだ理由として、世界に誇る名所の上、門や塀で人の出入りを制限できる点を挙げる。しかし、城内は二の丸御殿や本丸御殿など、国宝や重要文化財に指定された木造建造物が28件ある。普段は火の使用を禁じている場だ。

 市火災予防条例は原則、文化財がある区域では「みだりに喫煙し、又はたき火その他の裸火を使用してはならない」と定める。近年では2016年の国際会議「スポーツ文化ワールドフォーラム」の関連イベントで、唐門(重要文化財)の前にかがり火が設置されたが「極めてまれなこと」(元離宮二条城事務所)。その際は中京消防署に届け出て、消火器を近くに置くなど防火対策を講じたという。

 今回も同事務所は「最も恐れているのが火災」と気を引き締める。文化庁の担当者も城内での聖火リレーについて「文化財のそばで火を持って走るというのは、イレギュラーな行為。万が一の想定もして備えてほしい」と注視する。

 市は城内のルートについて「検討中」とするが、建造物とは一定の距離を開け、限られた区域を走るなど配慮するという。市市民スポーツ振興室は「聖火はたいまつとは違い、火の粉が飛び散ることもないので危険性は低いと考えている」とする。

 一方、緊急事態宣言が5月末まで延長されたことを受け、期間中に予定される聖火リレーそのものに黄色信号がともった。門川市長は7日、記者団に対し「市民ぐるみで感染拡大防止に取り組む時期。熟慮して府と相談し、必要なら組織委員会に意見する」と慎重な姿勢を示した。開催の可否を巡り、市は直前まで調整に追われそうだ。