新道さんらの世話で「地域猫」として育てられている猫たち(新道さん提供、南丹市美山町北)

新道さんらの世話で「地域猫」として育てられている猫たち(新道さん提供、南丹市美山町北)

 野良猫の繁殖や生活環境の悪化を防ぐため、地域ぐるみで管理する「地域猫」の取り組みが注目されている。観光客が多く訪れる京都府南丹市美山町北の「美山かやぶきの里」でも今春から取り組みを開始し、活動を金銭的にサポートする自治体もある。実態を調べた。

 4月中旬の朝方、かやぶきの里。「ほら、ごはんだよ。おいで」。新道尚美さん(46)が声を掛けると猫が皿に近寄ってきた。写真を撮ろうと記者が近づくと足をぴたり。「野良猫だから慣れていない人にはまだ警戒している。数カ月間餌をあげてようやく私も餌をくれる人だと分かってもらえた」


 昨年12月ごろからすみ着いた野良猫。やがて子猫を連れて現れ、今では4頭が元気に村を走り回る。地域の広報紙に取り上げられるなどすっかりなじんだが、以前は民家に入り込んで台所を荒らす厄介な存在だった。


 猫は繁殖力が高く、放置すればもっと数が増え、被害は拡大する。「大きな問題になる前にできることはないか」。新道さんは対策を思案する中で全国で広がる「地域猫」の取り組みを知った。


 地域の合意を得た上で複数の住民が餌をやり、トイレを設置するなど猫を世話し、一方で不妊手術を施し、新たな繁殖を防ぐ。動物愛護と生活環境保全の両立を目指す試みとして注目される。


 新道さんは保護猫の譲渡会を開くNPO法人「古都ねこくらぶ」(京都市上京区)に相談。1頭2万~3万円かかるとされる手術代は、公益財団法人「どうぶつ基金」の全額補助を受け、猫の不妊手術専門病院への送迎や出張捕獲などの費用2万4千円は地域の自治会に補助してもらった。「地域の補助がありがたかった。数が増えればもっと大きな負担になっていたはず」


 多くの自治体では猫の管理は飼い主本人が責任をもって行うべきとして、地域猫など、野良猫の繁殖抑制の取り組みに費用補助をしておらず、南丹市も制度を設けていない。しかし近年、変化も見え始めている。


 京都市では野良猫による地域トラブルを防ぐため、餌やふん尿の管理、周辺の美化活動を地域が担うことを条件に不妊去勢手術を無料で行っている。制度を開始した2000年度から登録数は増え、19年度の累計登録数は254件、手術頭数は195頭にのぼる。


 京都市の地域猫事業に関わる「京都動物愛護センター」(南区)は「京都市の制度はトラブル解消には役立つ一方、猫嫌いの住民が餌やりを問題視し、折り合いが付かない場合もある」と指摘。「地域の特性に合わせた支援の在り方を考える必要がある」と話す。


 亀岡市では本年度から、野良猫の不妊手術の報告書や領収書を提出すれば、審査の上、最大5千円の補助を受け取ることができるようにした。市は制度導入の理由を「ふん尿のにおいなどに対する相談が多く寄せられていたため」と説明、6日時点で27件の申請があったという。八幡市、城陽市でも一定額を負担している。


 猫の数が増えすぎて住民のトラブルの元になる以上、地域全体で対策を考えることが不可欠だろう。行政も制度の見直しなど、必要に応じた対策が求められている。