災害時に自力での避難が困難な住民をどう支援するか、その準備の不十分さが浮き彫りになった。

 手助けが必要な住民を把握しておく「避難行動要支援者名簿」に関する総務省消防庁の調査で、「難病患者」を対象としている市区町村の割合は、昨年10月時点で約6割にとどまることが分かった。

 身体障害者と知的障害者、要介護認定を受けている人はいずれもほぼ全自治体が対象とし、精神障害者も9割にのぼった。

 「災害弱者」のうち、難病患者が避難支援の網の目から漏れている可能性がある。実態を踏まえた見直しが必要だ。

 難病は、発生の仕組みが明らかでなく、治療方法が確立していない-などと定義され、多くが医療費助成の対象となっている。国は現在、潰瘍性大腸炎やパーキンソン病、多発性硬化症など約330の病気を指定し、患者は約94万人にのぼる。

 2013年の災害対策基本法改正で、自ら避難するのが難しく支援を必要とする人の名簿を作成することが市町村に義務付けられた。名簿の範囲は自治体が判断して定める。

 消防庁調査で、難病患者を名簿に掲載している割合は、滋賀県が84・2%で上位だったのに対し、京都府は23・1%と全国で2番目の低さだった。

 要支援者の範囲から外れる要因として、改正法には難病患者を対象に含むよう明記されていないことが挙げられる。ただ、居住地によって対応が分かれるのは問題があろう。

 理由は他にも考えられる。

 障害者や要介護者は、名簿を作成する市町村が認定するため把握が容易だ。一方、難病患者は、医療費助成の手続きを行う保健所が主に都道府県の所管となっているため、市町村が把握しにくい事情がある。

 難病といっても、痛みやしびれ、倦怠(けんたい)感などの症状は外観では分かりにくく、「一人で逃げられる人」と判断されがちな患者がいるとの指摘もある。

 東日本大震災では災害弱者の避難に行政の支援が行き届かなかったケースがあったという。それを教訓にしたのが名簿作成だ。万一の際に逃げ遅れる人が出ることがあってはなるまい。

 難病患者の団体からは、名簿掲載をもっと進めるよう要望が出ている。厚生労働省は、都道府県が市町村と難病患者の情報を共有する仕組みをつくるよう呼び掛けている。

 県の中には医療費助成の申請で保健所を訪れた患者の同意を得た上で市町村に知らせたり、障害者手帳を持っていなくても行政の訪問指導を受けている人を対象にしたりする自治体の例がある。

 難病患者を名簿に含めるため、あらゆる工夫を試みてほしい。

 名簿は支援の前提となる。自主防災組織や民生委員に提供され、災害時の避難支援や安否確認に利用される。定期的に更新し、防災訓練などで活用できるようにしておくことが重要だ。

 地震や水害など災害はいつ起きてもおかしくない。自治体は援助が必要な人の把握と対策を具体化するよう努めるべきだ。