<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは。料理研究家の小宮理実です。先日、お布団を干していると、目の前をトンボが気持ちよさそうに飛んでいて、思わず目で追ってしまいました。秋は静かに訪れているのですね。そして、食卓にも小さな秋がやってきました。

 毎年楽しみなのが「きごしょうのつくだ煮」。きごしょうとは唐辛子の葉のこと、夏から秋にかけての短い時期に出回ります。固い茎は取り、柔らかな葉のみを使います。下ゆでした後、酒、しょうゆ、おだしを加えて、汁気がなくなるまで煮たら仕上げに塩を少々。好みの味わいに調えます。葉とうがらしの香りが口の中いっぱいに広がり、白いごはんにもぴったり。きごしょうは、京都人にとって秋を知らせるとっておきの味わい。口にするたびに、からだの細胞たちへ「おーい、秋がやってきたよ~」なんてサインを送っているような気持ちになります。

 「おいもさんと糸昆布の炊いたん」は、母がよく作ってくれた一品。いつも「おなかにええよ」の一言が添えられます。「そうや、おなかにええわ」と暗示を掛けながら口にすると、翌日のお通じが良くなります。母の力は偉大です。温かくしても、冷たくしても。常備菜としてもお薦めです。

 夏の名残のししとうは「ししとうとピーマンの焼き浸し」に。焼いて、おだしに酢を加えた漬け汁に浸しただけの一品は、箸やすめにもお薦めです。ピーマン好きの私がよく作るのが「ピーマンとおじゃこの炒め煮」。刻んだピーマンをごま油で炒めて、おじゃこ、酒、しょうゆ、ひとつまみの塩を加えます。血液をサラサラにしてくれるピーマンはお肌にも良いと信じて食べ続けています。「ひじきの炊いたん」は、ゆで大豆を加えてタンパク質を強化。多めに炊いておいて、翌日は手軽な転用料理に。電子レンジで水切りした豆腐に、ひじきの炊いたんをたっぷり加えます。ピリッとさせたい方は和からしを加えてみてください。大人の味わいの「ひじきの白あえ」に大変身です。

 どのお料理も余すことなく食べきること。私たちにできる小さなエコ活動は、未来の地球を守ると信じています。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

【2020年8月30日朝刊掲載】

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。