「社会の公器」とされる企業の姿勢が問われよう。

 クーデターで実権を握った国軍による市民への暴力が続くミャンマーで、国軍とつながる企業や事業に日本企業が関わっている。

 日本政府が後押しし、インフラ事業などに大手企業も多く参入してきた。

 今回の事態で、欧米は市民弾圧を非難して国軍系企業に制裁を発動し、投資停止を呼び掛けている。

 これに対し、日本企業の事業見直しの動きは鈍さが目立つ。状況を放置すれば、国軍による人権侵害を間接的に支え、容認していると見なされかねない。

 ミャンマーは2011年の民政移管後、「アジア最後のフロンティア」として外資が相次ぎ進出した。積極的な政府開発援助(ODA)もてこに日本から約400社が展開した。外資規制のため現地企業と組む必要があり、国軍系企業とも提携した経緯がある。

 最大都市ヤンゴンの再開発事業には、日本の官民ファンドとフジタ、東京建物の企業連合が参加。年間2億円超の地代が国防省・国軍に支払われていたという。政府系金融機関も融資していた。

 国軍側に加担することへの株主の批判や、消費者の不買運動を懸念し、対応に動く企業もある。

 キリンホールディングスはクーデター後、ビール事業での国軍系企業との合弁解消を発表した。多くの進出企業も国軍側への配当金支払いを停止したとしたが、具体的な事業見直しは進んでいない。

 国軍との「パイプ」を重視する日本政府が制裁を控えていることも背景にあるだろう。高い成長を見込んで巨額の投資をしてきた企業にとって、引くに引けない状態で進退判断に苦慮しているといえる。

 人権対応を巡っては、中国での少数民族ウイグル族の強制労働を理由に、米英両国が関連する綿製品などの輸入を規制し、欧米のアパレル大手が取引停止へ動いた。

 「関与」を名指しされた世界約80社に日本の14社が含まれる。いずれも強制労働が疑われる企業との直接取引を否定するが、サプライチェーン(供給網)を見渡した人権状況の把握態勢が不十分との指摘もある。

 世界では近年、人権問題をはじめ企業の社会的責任に対する投資家や消費者の目が厳しさを増している。対応の遅れや不備は、事業活動の足元を揺るがす重大な経営リスクを招く恐れがあることを自覚しなければならない。