新型コロナウイルス感染に苦しむ世界にあって、「ワクチン格差」が深刻な問題となっている。

 英国などの国際研究チームが、ワクチン供給可能量の少なくとも70%を世界人口の16%にすぎない高所得国が買い占めている実態を明らかにした。

 先進国が製薬企業と直接契約を進め、資金力に乏しい途上国への供給が滞る。

 人の命に関わるワクチン格差を放置するわけにはいかない。途上国で感染拡大が続けばパンデミック(世界的流行)は終息せず、世界経済回復の足かせにもなる。

 国際社会は協調しワクチンの公平な普及に本腰を入れるべきだ。

 こうした中で、米国のバイデン政権がワクチン特許の一時放棄を支持すると表明した。トランプ政権から続くワクチン「囲い込み」からの転換は、ワクチン格差の解消への一歩になるかもしれない。

 特許の一時放棄は昨年10月、インドと南アフリカが世界貿易機関(WTO)に提案した。製薬企業を抱えるスイスなど先進国は難色を示してきたが、米国が支持に回った。ワクチン開発企業のある英国やドイツは反対を表明、日本は米国の動きを見極めるようだ。

 製薬企業の国際団体は猛反発している。特許権を手放せば、開発に投入した巨額資金を回収できず、今後の研究開発への意欲をそぐ。中長期的に見れば世界の損失につながる、というのが理由だ。

 一方、コロナ感染の現場で活動する国際NGO「国境なき医師団」は、特許権放棄によって途上国に多様な医薬品製造者、供給者が参入できると期待する。

 WTOで議論を急いでほしい。一時放棄を支持する国は多数派だが、加盟国の全会一致が原則とあって、現実には決まるまでに時間がかかりそうだ。

 しかし、途上国へのワクチン供給は急務だ。あらゆる手だてを打っていく必要がある。

 世界保健機関(WHO)の主導で発足した国際的な枠組み「COVAX」を強化し、活用したい。高・中所得国の拠出金でワクチンを共同購入し、安価で途上国などに分配する仕組みだ。

 日本は特許権を国際的に共有して途上国に安価に供給する「特許権プール」を提案している。

 いずれにしても、製薬企業の協力が欠かせない。ワクチン開発には巨額の公的資金が投入されていることを指摘しておきたい。

 ワクチンは「世界の公共財」と訴える声を聞く。自国だけでなく、世界に目を向けるべきだ。