サルの芸に目を細める千原さん(東近江市桜川西町)

サルの芸に目を細める千原さん(東近江市桜川西町)

 近江鉄道桜川駅(滋賀県東近江市)近くにあるスーパーの駐車場で器用に手招きするのは、ニホンザルのうめちゃん。行き交う人も驚いて足を止める。スーパー前のたこ焼き店の「看板娘」。地元のアイドルとなっている。

 千原順子さん(61)は県内のイベント会場を中心に、うめちゃんら3匹のサルと芸を披露している。子どものころ、テレビで見たチンパンジーがいとおしくて、どうしても飼いたくなった。飼育費が高く断念し、38歳の時にサルを飼った。栃木県で猿回しを目にすると、芸を教えたくなった。

 「芸をするサルの調教法を習い、練習した」。ただ一筋縄にはいかない。手を上げてもらうだけでも根気がいる。やりたくなければ動いてくれない。我慢比べだ。初めは「かわいそう」と思うし、周りからは「いじめている」と陰口をたたかれた。

 毎朝5時に起きて人気のない公園で一緒に散歩。移動用のおりの掃除や消毒は1日2回欠かせない。つらい仕事にも思えるが、「人のように思っているので苦じゃない」と明かす。2004年にイベント会社「おさるの冒険」を立ち上げ、群馬県内の温泉地など関東を中心に観光客相手に芸を見せた。

 今は3匹を飼育している。人のように病気になれば、神奈川県まで専門の病院に連れて行く。スッと近づき、子どものようにかわいく抱きついてくることもある。芸達者なうめちゃんは2013年、女優長澤まさみさんとCMで共演を果たすまでになった。

 母の病気を機に15年、栃木から故郷の滋賀県東近江市に帰った。県内でサルの芸を見せる会社はなく、イベント出演で週末は埋まるほど仕事は順調だった。しかし新型コロナウイルスが直撃した。活動の場が激減し、たこ焼き店と兼業で急場をしのいでいる。それでも子どもがサルに寄ってきて、いろいろ話してくれるのがうれしい。

 忘れられない笑顔がある。老人ホームを訪れたときのこと。「施設のおばあちゃんが、『一生懸命笑わそうとしてくれてる』と、子どもを見守るような目で泣いていたんです。感動しちゃって」。コロナ禍が明けたときには、またおばあちゃんを笑わせる。東近江市今堀町在住。