アスリートの尊厳を傷つける卑劣な行為に捜査のメスが入った。

 テレビ番組に映った女性選手の画像をアダルトサイトに無断で転載したとして、著作権法違反容疑で京都府在住の男が警視庁に逮捕された。性的な意図で切り取った画像がインターネット上に拡散される被害が深刻化しており、東京五輪・パラリンピック開幕目前に根絶へ強い姿勢を示す形となった。

 警視庁によると、男は一昨年5月、自身が運営するサイトでスポーツ番組の選手画像を見られるようにし、番組制作会社の著作権を侵害した疑いがある。サイト内に「アスリート」という専用項目を設け、多くの女性選手の競技画像に性的なコメントを付けて掲載していた。閲覧数を稼いで広告収入を増やすのが狙いとみられる。

 名誉毀損(きそん)罪にも問われるべきだろうが、告訴など選手の負担も考慮し、画像を無断使用されたテレビ局側を被害者として立件した。犯罪として厳正に取り締まることが抑止力になる。警視庁の「違法性が認められれば積極的に摘発していく」姿勢を評価したい。

 アスリートが競技会場で性的な意図で写真を撮られたり、会員制交流サイト(SNS)にみだらな文章や画像を拡散されたりする被害は以前から問題視されてきた。選手を盗撮する手口にとどまらず、報道目的の写真や動画を性的な意図で加工して拡散させる事例も増加。被害は男性アスリートや応援のチアリーダーらにも広がっているという。

 これまで各競技団体が会場での観客による撮影を制限するなど独自に対応してきた。しかし、女性陸上選手が競技団体に相談したのを受け、日本オリンピック委員会(JOC)など7団体が昨年11月、盗撮や写真・動画の悪用、悪質な投稿を「卑劣な行為」と非難する共同声明を発表した。

 JOCなどが対策の一環として設置した情報提供窓口に約千件の情報が寄せられた。今回の摘発はその情報が端緒となったそうだ。

 ただ氷山の一角にすぎず、解決には課題が多い。著作権法違反という間接的な容疑での立件には限界がある。セクハラ、性犯罪と明確に位置付け、「盗撮罪」やネット上での拡散行為の処罰など法整備の議論が必要ではないか。

 スポーツ界では競技会場の見回りや注意喚起といった自衛策も講じてきたが、対処し切れない。警察や行政とも連携し、情報の収集と共有を進め、より強力な対策に発展させることが重要だ。