新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種が本格化している。

 菅義偉首相は7月末までの接種完了を目標に打ち出した。しかし、医療従事者の確保などで困難とみる自治体が少なくない。

 政府は接種の加速に向けて課題を洗い出し、市町村支援に本腰を入れてほしい。

 全国の高齢者約3600万人の接種は4月12日にスタート。大型連休明けになってワクチンの供給が進み、国は6月末までに配送を終えるとする。

 これまで、市区町村では地域医師会との調整や集団接種会場の確保を進めてきた。首相の7月末完了目標を受け、計画の前倒しを迫られている自治体もある。

 政府の12日の発表では、7月末までに高齢者接種が完了すると見込む市区町村は86%だった。滋賀の3自治体を含む14%の251自治体は間に合わないとし、9月以降になるとの回答もあった。

 ただ、完了見込みとした自治体も「医療従事者の確保が前提」などの条件付きだ。

 個別接種を担う地域の医院からは「通常診療もあり、対応できる人数に限りがある」といった厳しい声も聞かれる。

 歯科医や薬剤師に協力を求めたり、「潜在看護師」の掘り起こしや企業の診療所の活用を模索したりする動きもある。人や財政面で自治体への支援が求められる。

 国と自治体の連携も重要だ。

 政府は自衛隊を動員して東京と大阪で24日から大規模接種センターを開設する。接種が大幅に進むと期待される半面、市町村と接種者情報を共有する仕組みがなく、二重予約などが懸念されている。トラブルを防ぐため、十分なすり合わせが欠かせない。

 接種希望者からの予約を巡っても混乱が続出している。電話がつながりにくかったり、役所の窓口に殺到したりした。予約システムの障害で受付ができなくなる事例も起きた。

 インターネット予約は高齢者には分かりにくく、学生アルバイトが手続きをサポートする市もある。申し込みの集中を防ぐため、年齢層ごとに受け付ける方法もあるのではないか。自治体は知恵を絞り、改善策を探ってほしい。

 国も号令をかけるだけでなく、困難な状況の自治体へ物心両面のてこ入れが要る。

 ワクチンへの国民の期待は大きい。高齢者の後には基礎疾患のある人や一般への接種が控える。円滑に進むよう、あらゆる手だてを講じるべきだ。