京大生に贈られた新鋭作家の短歌を展示している生協ショップルネ(京都市左京区)

京大生に贈られた新鋭作家の短歌を展示している生協ショップルネ(京都市左京区)

 逢(あ)うことのない春だけど春だからことばは君に逢いたがってる―(千原こはぎさん作)。新型コロナウイルス禍でさまざまな制約を受けている京都大(京都市左京区)の新入生を励まそうと、新鋭の歌人たちが一首を贈る「短歌フェア」が構内の生協ショップルネで開かれている。書籍コーナーに作品を展示したところツイッターで「すてきです!」などと反応が続出。厳しい経営状況にある店を訪れる学生も増えているといい、新たな形で人のつながりが生まれている。

 京大生協は2018年から毎年4月、多くの文芸書を手掛ける福岡市の出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」の協力のもとフェアを企画してきた。今年は歌集を並べるだけでなく「コロナ禍の新入生」に宛てて短歌を作ってもらうよう歌人に依頼した。これに応えた29人からエールの作品が届いた。

 作品は小さなカードに印字し、メッセージを添えて展示した。<冷え冴(さ)えた自分に芯のあることを自覚してこの桜並木を>と歌ったのは虫武一俊さん。「もやもやを横に一度おいて、自分のなかにある感覚を見つめ磨いて下さい。それがあなたの、困ったときの助けになります」と背中を押した。西村曜さんは希望や不安、痛みといった新入生が抱える複雑な心情を察し、<いまきみの惑いをすべて春の歌ひかりを言うのは後でいいから>と伝えた。休校中の校舎や時計台を題材にした作品もある。

 生協もコロナ禍で苦境に立たされている。2020年度は授業のオンライン化などで食堂や購買の利用者数が46・7%(前年度比)に落ち込んだ。今回のフェアを企画したスタッフの山下貴史さん(52)は「学生たちはキャンパスに来ることも友人づくりも思うようにいかず先行きの見えない不安を抱えている。31文字でつなぐ短歌の豊かな世界観に触れることで、心の持ちようが変わるきっかけになればうれしい」と話している。フェアは5月末まで。