重陽「茱萸袋(ぐみぶくろ)」 有職造花 雲上流 村岡松華堂 (C)スタジオバウ 久保田康夫

<京の知恵 しあわせの食 小宮理実>

 こんにちは。料理研究家の小宮理実です。9月と言えば、五節句のラスト「重陽(ちょうよう)の節句」です。陽の数字である9が重なる9月9日を重陽と言い、不老長寿を願います。邪気払いの効力があるとされてきた菊が主役で、めでるだけでなく、食用としても楽しみます。菊の花びらを酒に浮かべた「菊酒」なども風情があります。重陽は「栗節句」とも言い、台風前に実った新栗を入れて赤飯を炊くと、その年は健康で過ごせるとの言い伝えもあります。また、ナスを食すと風邪をひかないとも言われてきました。今回は、菊、栗、ナスを使った秋のお料理をご紹介します。

 まずは「栗赤飯」で新栗ならではのぜいたくを。大きなお鍋にお湯を沸かして栗をゆでますが、栗を取り出すのはお湯が冷めてから。お尻のあたりから包丁を入れると、鬼皮や渋皮もむきやすくなります。「お赤飯の銀あん」は、お赤飯を一口サイズの俵型おにぎりにして、上から熱々のあんをかけていただきます。お祝い事や、ちょっとしたおもてなし料理にいかがでしょう。わが家は月に一度はお赤飯を炊くので、食べやすい大きさのおにぎりにして冷凍しています。

 食用菊を使った「菊の花のおひたし」。手のひらで菊の花を反るように割いてみてください。花びらが見事にバラバラになります。湯の中に少量の酢を落とし、菊をしっかりゆでると、菊のくせが和らぎます。ホウレンソウやシメジなど、旬のお野菜とあえて秋らしさを。いただく前にすだちを搾り、香りも一緒にいただきます。重陽には「焼きナス」も口にします。とろろ昆布をのせて、うま味を加えてみました。「揚げナスと豚肉の温しゃぶ」は、温かい一皿として。中華風の甘酢だれをかけ、食感をよくするためにナッツを加えています。「ナスと牛肉のすき煮」は、冷蔵庫に作り置きしているすき焼きのたれを使いました。焼いた野菜やお肉にからませれば、いつでもおいしいすき煮ができて大助かり。

 秋らしい食事をいただいて、節句本来の意味である「休息をとる」ことを心掛けたいですね。心も体も休むことで、本当に大切なことが見えてくる気がしています。(料理講座「幸せ運ぶフクチドリ」主宰)

【2020年9月6日朝刊掲載】

ホームページ「料理研究家・小宮理実」(https://komiyarimi.com/)


◆小宮理実 こみや・りみ 1971年京都市上京区室町生まれ。おせち料理・行事食研究家。家庭で作る季節の行事食を伝えており、食育活動のほか、商品開発も手掛ける。著書「福を呼ぶ京都 食と暮らし暦」「京のおばんざい四季の味」。