ケンサキタンポポの花。緑色の「総苞外片」に特徴的な突起がみられる(鈴木武さん提供)

ケンサキタンポポの花。緑色の「総苞外片」に特徴的な突起がみられる(鈴木武さん提供)

 道ばたでよく見かけるタンポポの中に、京都府綾部市域で発見された種類がある。同市上杉町で90年近く昔に発見された「ケンサキタンポポ」。独特な形状で区別されるが、調査は進んでいない。別のタンポポと同一とする見方もあり、名前が使われなくなる可能性も。謎多きタンポポの現状を調べた。

 ケンサキタンポポは1933年、丹波や丹後、但馬地方の植物を調べた荒木英一氏が、東八田村上杉(現綾部市上杉町)で採取。標本を京都帝国大の北村四郎氏が新種として発表、「Taraxacum ceratolopis Kitam」という学名がつき、採取地である綾部が基準産地となった。

 花の付け根にある「総苞(ほう)外片」に角状の突起が着いており、不動明王の持つ「剣先」に似ているとして和名がついた。花は関西の代表的な在来種、カンサイタンポポより一回り大きく、レモンのような色合いが特徴。綾部のほか、島根県でも見つかっている。

 ところが2006年、日本海側に多く自生する「ヤマザトタンポポ」と同一とする研究が発表された。ヤマザトタンポポとケンサキタンポポは採取者と発見者も新種発表された論文も同じで、見分ける基準は突起の有無のみ。ケンサキタンポポとして取り扱うか、意見が分かれるようになった。京都府のレッドデータブック2015でもヤマザトを絶滅危惧(ぐ)種と記載し「ケンサキタンポポとの異同の判断に問題を残している」としている。

 兵庫県立人と自然の博物館(三田市)研究員で、タンポポを調査してきた鈴木武さん(58)は「ただの変異なのか、ヤマザトと見分けるのは難しい」。同じ個体でも、観察時期によってケンサキの特徴が現れることもあるという。

 そもそもヤマザト、ケンサキともに研究が進んでおらず、一般的な図鑑にも載っていない状態。現状ではケンサキの立場は厳しいが、鈴木さんは「遺伝子の分析が進めば、近縁種との分け方が変わってくる。そうなれば、改めてケンサキの名前が必要になるかもしれない」と話した。