2019年春闘は自動車、電機など主要企業の回答が出そろった。基本給を底上げするベースアップ(ベア)は前年水準を割り込む低調な回答が相次いだ。

 世界的な景気減速への懸念が足かせになったと言えよう。賃上げの息切れ感が強まれば家計支出の重しとなり、消費の鈍化につながりかねない。安倍晋三政権が目指す経済の好循環は一向に実現せず、10月には消費税増税を控える。手詰まりの打開が求められる。

 14年以降、政府が経済界に賃上げを要請する「官製春闘」が続いてきた。だが、経団連は脱「官製」を掲げた。民間企業の賃金は労使の折衝で決めるのが筋であり、経団連の姿勢は当然だろう。

 各社の経営側は今春闘で例年以上に厳しい姿勢を貫いた。国内景気は既に後退局面に入ったとも指摘され、経営側が人件費の増大などコスト増に慎重になるのは理解できる。ただ、企業の内部留保が大きく膨らむ一方で、働き手の取り分を示す労働分配率は低迷したままだ。経営側の対応や努力は十分とは言いがたい。

 経団連はベアだけでなく、ボーナスや諸手当など多様な年収ベースの賃上げ検討を各企業に求めている。しかし、息長く家計や消費を支えるためには業績に左右されるボーナスなどよりも、景気の底上げにつながるベアで賃金を安定的に引き上げることが重要だ。

 今春闘では経営側のベアに対する慎重姿勢などを見越し、組合側にも変化の動きが見られた。自動車総連がベアの統一要求額の明示を見送り、相場形成のけん引役だったトヨタ自動車労組も要求段階から額を示さなかった。

 「一律・横並び」で賃上げを目指す従来の春闘は転換期を迎えたとも言える。労働側の力が分散し、春闘の機能が後退しないか注意が必要ではないか。

 労使双方が重視したのは仕事と生活の両立支援、長時間労働の是正など働き方改革を巡る交渉だ。来年4月からの「同一労働同一賃金」への対応を先取りし、一部の非正規社員を正社員と同じ待遇にする企業も出ている。こうした交渉の在り方は先駆的で評価できよう。

 今後は中堅、中小企業の交渉が本格化する。大企業との賃金格差は解消されておらず非正規を含めた賃上げや処遇改善が不可欠だ。

 賃金の持続的な上昇に向けて官民の多面的な改革が求められる。政府も国民生活と景気の底上げに軸足を置き、企業が活動しやすい環境づくりに努める必要がある。