政府が著作権法改正案の今国会への提出を見送ることを決めた。

 法案は、現在は音楽や映像に限られている海賊版ダウンロード規制を、写真や文章などすべての著作物に広げる内容だった。

 漫画などを違法にコピーしてインターネットで公開する海賊版は巨額の被害を出している。何らかの規制は必要だ。

 とはいえ、あらゆる著作物を対象としたダウンロード違法化には、海賊版の被害を受けている著作権者の団体からも強い異論が出ている。法案提出の見送りは、妥当な判断だろう。

 国は当初、海賊版対策としてサイトへの接続遮断(サイトブロッキング)を法制化することを検討していた。しかし、文化庁の有識者会議で、憲法の「通信の秘密」に抵触するという指摘が相次ぎ、法制化を断念した経緯がある。

 今回の法案はその直後からまとめられたが、そのおおもとを議論する文化審議会の小委員会はわずか5回の開催にとどまった。「ネット利用を萎縮させる」という異論も続出し、議論が深められたとは言い難い。

 最も反発を招いているのは、規制対象が幅広く、私たちが日常的に行っているネット利用が処罰対象になりうることだ。

 法案では、利益目的ではなく個人的活用のためのダウンロードも一律に罰せられる。スマートフォン画面を保存するスクリーンショットも規制される。

 個人の資料のためのダウンロードや、メモ代わりにスマホ画面を記録することまで規制するのが現実に可能とは思えない。無理をすれば、ネット利用の萎縮や規制当局に対する不信感を強めるだけにならないか。

 そもそもネット上には、海賊版かどうか分からないコンテンツが少なくない。「海賊版と知りながら」利用したのかを証明することは簡単ではない。 

 法案提出の見送りの背景には、参院選を前にネット利用者の支持をつなぎ止めようとする自民党の判断がある。選挙後に同じ法案を出すのは許されない。

 漫画家などの団体は海賊版規制を求める一方、図版や資料などをダウンロードするのは新たな創造につながる行為で、規制は創作意欲の萎縮につながるとしている。

 創作の現場には、法律による一律的な規制が難しい実態があろう。そうした現実を踏まえるために、創作者を交えて議論をやり直す必要がある。