新幹線や特急の車内販売は、スーパーで買うより割高だ。だから、価格以上のプラスアルファを提供したい-。山形新幹線の「カリスマ販売員」として知られた茂木久美子さんが著書に記している▼コーヒーを買ってもらったら「入れたてですよ」と一言を添える。ありがとうございますの後に「また来ますね」と言う。ちょっとした言葉遣いで、乗客に声をかけてもらえる頻度は大きく変わるという▼そんな努力も及ばなかったのだろうか。きょうのJRダイヤ改正を機に、新幹線や在来線特急の多くで車内販売が大幅に縮小される。北海道と九州の新幹線からは全面撤退だ▼利用者減少に加え、人手不足で販売員の確保が難しくなったため…と聞けば納得しそうになる。だが、もうからないからやめるという選択は合理的に見える半面、稼ぐ意欲を放棄したようにも思える▼茂木さんは、乗客の顔やしぐさを記憶してタイミングよく声をかけ、車内のようすが把握できるようワゴンを後ろ向きに引くなどの試みを重ねた。乗車率が低くてもお客さんにじっくり対応すれば「売り上げはさほど下がらない」とも▼利益を出すのが難しい時代、コスト削減は大切だ。だが、現場の工夫や乗客の期待まで削ることになっては得策とはいえまい。車内販売に限らないが。