家並みの奥で湖上に浮かぶ権座。黄金色に染まる稲穂をコンバインが刈り取る(滋賀県近江八幡市円山町の山上から東を望む)

家並みの奥で湖上に浮かぶ権座。黄金色に染まる稲穂をコンバインが刈り取る(滋賀県近江八幡市円山町の山上から東を望む)

4隻の田舟を連結し、対岸の権座へとコンバインを運ぶ農家たち(10月9日、近江八幡市白王町)

4隻の田舟を連結し、対岸の権座へとコンバインを運ぶ農家たち(10月9日、近江八幡市白王町)

 秋晴れの朝、滋賀県近江八幡市白王町の湖岸から田舟がゆっくりと動き出した。4隻が連結され、どっしりと重いコンバインを載せる。対岸の小島へ稲刈りに向かう。
 島は「権座(ごんざ)」と呼ばれ、琵琶湖最大の内湖、西の湖に浮かぶ。先人が耕作地を求めて開墾した湖上の水田だ。かつては一帯に同様の島があったが、1960年代の干拓事業で姿を消した。
 唯一残った権座や一帯の水郷は2006年に国の重要文化的景観に選ばれ、地元住民らが「権座・水郷を守り育てる会」を結成し、地域ぐるみで保全に取り組む。
 昔は牛を、今は農業機械を運び込んでの米作り。会の母体の営農組合が約1・5ヘクタールで酒米を育てる。手間がかかり、危険も伴う作業だが、事務局長の大西實さん(64)は「何百年もかけて築かれた大地を荒廃させるわけにはいかない」と力を込める。
 権座に上陸したコンバインが黄金色の稲穂を刈り、次々に運搬機に移す。やがて日本酒へと醸される秋の実りを運び、田舟は幾度も湖を行き交った。