詳徳中の中庭で練習する吹奏楽部ファンファーレ隊の生徒たち(亀岡市篠町)

詳徳中の中庭で練習する吹奏楽部ファンファーレ隊の生徒たち(亀岡市篠町)

朝霧が晴れる様子をイメージしてファンファーレを作曲した葛西さん(亀岡市篠町)

朝霧が晴れる様子をイメージしてファンファーレを作曲した葛西さん(亀岡市篠町)

 東京五輪の聖火リレーの公道中止を受け取りやめになった亀岡市役所(京都府亀岡市安町)前でのリレーの出発式では、市内在住の作曲家の男性が書き下ろしたファンファーレが響き渡る予定だった。演奏するはずだった詳徳中(篠町)吹奏楽部ファンファーレ隊の生徒たちは、新型コロナウイルス感染拡大が影響したことに悔しさをにじませつつ「コロナ収束後に披露したい」と強く願っている。

 曲を手掛けたのは、作曲家で指揮者の葛西進さん(73)=篠町。長く暮らす地域への恩返しの思いで作曲を市に申し出た。亀岡特有の朝霧に着想を得て、約40秒の「朝霧に輝く」を完成。濃霧で混沌(こんとん)とした情景をフルートとクラリネットで表現し、そこに力強いトランペットの音色が響く。葛西さんは「トランペットの叫びは、霧をも晴らすような人間の強い意志だ」と説明する。

 ファンファーレ隊は2、3年生の12人で構成。本番では1人目のランナーのスタートに合わせ、葛西さんの指揮で演奏する流れだった。生徒は4月下旬に譜面を受け取り、コロナによる部活動の制限がある中、個々で練習を重ねた。顧問の葛西利安教諭(52)は「慣れない楽器に泣きながら練習する子もいた」と振り返る。

 生徒たちは一度も、作曲した葛西さんの指導を直接受けられず、曲を仕上げられなかった。府から公道での聖火リレーの中止が正式に発表された翌日の13日に、中庭で最後の練習に臨んだ。3年の女子生徒(14)は「残念でしたが、いつか地域の人たちの前で披露できる機会があったらうれしい」と話した。

 葛西さんは「指導の中で生徒たちに音楽の力を伝えることが楽しみだった。曲は子どもたちが未来に向かって輝くイメージで締めくくっている。これはおしまいではなく、出発です」と生徒たちにエールを送った。